2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research Project on Tomiyama Taeko's life and 'Narrative Art': Interdisciplinary Approaches to the Study of Historical Context, Aesthetics/Ethics and Artistic Practices
Project/Area Number |
17H06180
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真鍋 祐子 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (00302258)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 毅 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (30383417)
李 美淑 立教大学, グローバル・リベラルアーツ・プログラム運営センター, 助教 (40767711)
藤岡 洋 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (80723014)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 富山妙子 / ポストコロニアリズム / フェミニズム / 炭鉱 / 韓国民主化運動 / シュルレアリスム / ラテンアメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に延世大で開催予定の富山妙子展覧会・学術シンポジウムの実施に向けて研究を進めつつ、その成果を発信した。まず美術史を軸とした活動では、7月に神奈川県下のギャラリーで「終わりの始まり 始まりの終わりⅡ」と題した富山妙子展覧会と、学術イベント「何も信じられない時代に何を語る」(7月14日)を開催した。11月30日には国際学術セミナー「時空をかける少女 富山妙子を撮る」を開催し、ラテンアメリカとの出会い、光州事件に関する富山の語りを収めた岡村淳の映像をもとにした議論の場を設けた。あわせて富山の経歴と全作品を網羅し、解説を付した日本語・英語・韓国語の対訳によるカラー画集『記憶の海へ―富山妙子の世界』を制作した(2000部)。 次に富山の作品が世界の歴史的動態に与えた影響を歴史社会学的に研究する観点では、学会・シンポジウム等での発表に加え、2020年に光州事件40周年を迎える韓国に協力して、学術発表を行なったり、記念行事やドキュメンタリー制作等に研究成果を提供した。そのうち2019年度内に公開されたのはネットメディア「ニュース打破」の調査報道番組「再び見る《自由光州》ビデオ」(5月17日放映)である。これら研究活動の意義については西日本新聞(2月1日)にて「日本からの光州事件」と題して取り上げられた。 一方、富山が50年代に取り組んだ日本の炭鉱について、あえてその後、彼女が炭鉱夫を「描かなかった」ことの意味を考える視点から、ドイツに移民した日本人元炭鉱夫に関する聞き取り調査を引き続き実施した。ルール大学地方歴史館のオーラル・アーカイヴ・プロジェクト「鉱山の人」に研究協力して、2名の日本人元炭鉱夫への映像記録制作に携わった。あわせて富山のルーツであり、2000年代最初の作品「蛭子と傀儡子」のモチーフとなった淡路島の調査も実施することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、年度末に予定されていた学会発表や国内外での調査を断念することになり、その点においては遅れを生じている面もある。 しかし、そのために確保しておいた日程・予算等を、画集の制作、映像・音声等資料のデジタル化にふりあてた結果、画集『記憶の海へ―富山妙子の世界』を完成させることができた。また岡村淳氏の映像記録作品の一部に韓国語字幕をつけるなどの作業も進めることができた。 したがって、総合的にみれば、コロナ禍で遅れた分が上記作業により補われているので、「おおむね順調に進展している」といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、富山から寄贈された資料のデジタル化を完了する。2019年度は映像と音源のデジタル化をほぼ終えられたが、写真や文字資料についてはまだ完成に至っていない。全資料のデジタル化を終えた後、延世大での展覧会にあわせて資料集のDVDを制作し、あわせてデータベース化してウェブサイトで閲覧できるよう作業を進めたい。これは日本近現代史、韓国現代史と日韓関係史において貴重な資料になると考えられる。 2020年度は本科研の最終年度であることから、各自の研究を進める一方、これまでの研究成果を発信する機会を作る。具体的には①延世大での展覧会・学術シンポジウム(11月~2月)、②光州での学術行事(5月開催予定だったがコロナ禍で延期、日程は未定)のほか、③東京大学東洋文化研究所の論集『東洋文化』101号で特集号を組むことになっている。本科研による研究分担者、協力者のほか、ドイツ、メキシコ、韓国からも各国現代史における富山の画業の意義について論文が寄せられる予定である。④富山のスライド作品「海の記憶」「倒れた者たちへの祈祷」「海の黙示」について、日本語・英語・韓国語の対訳で、DVD化を進める。 ルール大学地方歴史館のプロジェクト「鉱山の人」との共同研究を引き続き行う。また淡路島での調査を続行し、富山の作品世界が構築されるまでの過程を明らかにする。
|
Remarks |
研究協力者のLaura Heinがノースウェスタン大学に開設したウェブサイトで、富山妙子と丸木位里・俊の作品とその解説が掲載されている。同じく研究挙力者の坂元ひろ子、Rebecca Jennisonによって解説文の修正と日本語訳が進められており、日本語版が随時更新されている。
|
Research Products
(19 results)