2017 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Empirical Studies on Group Apology
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17H06189
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
多湖 淳 神戸大学, 法学研究科, 教授 (80457035)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三船 恒裕 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (00708050)
稲増 一憲 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (10582041)
大坪 庸介 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (80322775)
小浜 祥子 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (90595670)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 集団謝罪 / 政治学 / 心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的は、「集団間の謝罪と赦し」をテーマとして、心理学・政治学の若手研究者が協働し、今までにない分野横断・融合研究を実施することにある。集団間での謝罪と赦しは心理学や政治学において近年重要な問題としての認識が急激に増し、研究の蓄積が増えてきている。しかし、両分野での知見は必ずしも有機的に関連付けられることなく、心理学は学生や一般市民を主たる被験者として、研究室実験を通じたメタな理論の発展をとげる一方で、政治学は政治エリートに着目した事例の比較分析と政策的なインプリケーションに重点が置かれ、おおよそ学問分野を超えた協働の取り組みはなかった。本プロジェクトは、そのような心理学と政治学の壁を取り払い、心理学におけるメタ理論と研究室実験による検証結果の蓄積を、サーベイ実験手法を重視して研究を行ってきた政治学に応用する(心理学から政治学へのベクトルの融合)ほか、政治学での応用がもたらす知見は心理学におけるメタ理論の修正につなげ(政治学から心理学へのベクトルの融合)、特に集団の抱える歴史的文脈(コンテクスト)がいかに一般的な心理学的予測を阻害するのかを総合的に解き明かすことを課題としている。2017年度は、①謝罪抵抗感に関するプレ・サーベイ、②謝罪を台無しにしてしまうスポイラーの存在に関する調査、③個人と集団の謝罪メカニズムの違いをめぐる理論的な整理などを重点的に実施した。その過程で、政治学者と心理学者の協働がスムースに行われることを担保すべく、2017年9月と2018年3月にそれぞれ2日間の日程で神戸市内で研究ミーティングを行ったがそこでの議論はとてもプロダクティブであり、また調書にはなかったような新規的なアイディア、研究案が出てきた。今後も同様の形式で開拓研究にふさわしい先駆的な共同研究を目指す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2度の研究打ち合わせを通じて意思疎通を行い、研究の方向性を定めて作業を進めており、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、①日本政府がさまざまなシナリオで集団謝罪することに対する「抵抗感」の調査についてクラウドサービスを使った本実験を行うとともに、全戸配布サービスを使った追試を行う。異なった調査プラットフォームの活用が頑強な研究知見をもたらすものと考える。また、②重要な先行研究であるWilliam J. Long and Peter Brecke (2002) War and Reconciliation MIT Pressの議論に基づく実験を行う。国内の反対勢力の存在の意識化といった点で刺激を動かし、早期に論文につながっていくような研究を実施したいと考える。このほか、③集団謝罪を否定するような「スポイラー」のいた事例(例、えひめ丸事件)をもとに実験案を構成し、(1)政府間の謝罪は関係の価値を認め、今後の関係修復を目指す、(2)一方、遺族は心理的な意味での謝罪・癒しを求めているといった側面を切り出して研究を構成し、意味ある知見を得たいと考える。最後に、④謝罪が「社会的望ましさバイアス」によって左右されてしまう可能性を踏まえ、事案について「悲しみ」をもって謝罪を支持しているか否かの見極めを行うことが必要だと思うようになった。ゆえに、心拍実験を応用する可能性を検討する。予備調査の上、本調査が実施できるとよいと考えている。上記の計画は5名の協働で進めるが、その過程において、神戸および高知において研究ミーティングを予定し、そこでしっかりと共通理解を定め計画を進めていくこととしている。
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