2020 Fiscal Year Research-status Report
医学部生卒後研修制度がもたらした医療体制の変化と今後の課題:その検証と理論の拡張
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20K20279
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡邊 直樹 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (20378954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊野 太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00700494)
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (10411836)
小川 一仁 関西大学, 社会学部, 教授 (50405487)
栗野 盛光 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (90732313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 二部マッチング / 医師初期臨床研修 / ゲーム理論 / 定量的評価 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、コロナ禍で従来どおりの研究の遂行が困難な時期であったにも拘らず、理論、実証、実験において、それぞれ成果を得た。実験では、入札による複数財の割当問題や被験者に認知能力スコアと利他性などの関係について、マッチングにも応用できる成果を得た。実証面では、院外心停止に対する体外心肺蘇生法の費用対効果に関する分析がなされた。理論面の成果は次のとおりである。ワクチン接種などの公共サービのオンライン予約では、先着順でスロットを割り当てるとその転売が発生するが、それを回避するための抽選の一括方式が提案され、転売が生じないことが理論でも実験でも示された。医師初期臨床研修と関連づけるとすれば、マッチング問題でも先着順の分権的方式では問題が起こること、適切な直接メカニズムの実施ではそれを避けることができることが示された。 以上の研究成果はすべて査読付き国際専門誌から刊行されたか、刊行予定であるが、それらの他にも今後の投稿を予定しているものもある。しかし、トップジャーナルへの投稿を予定していた研究の実験を1年もの間実施できず、2019年度には完成されるはずであったマッチング実験を完了することができなかった。これまでに蓄積したデータは対面での実験を通じて収集されてきたため、遠隔実験に切り替えることが困難であったことも実験がストップしてしまった要因の一つであったので、現在は遠隔実験実施のための設備とソフトウェアの整備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展している。理論、実証、実験のすべての面で研究成果を挙げており、それぞれ、評価の定まった査読付き国際専門誌から刊行されたが、今後の投稿を予定しているものもある。コロナ禍にあるため、研究集会を開催することができない分、Zoomなどによる打ち合わせの機会は増えた。ただし、トップジャーナルへの投稿を予定していた研究の実験を1年もの間実施できず、これまで対面での実験を通じてデータを取得してきたため、遠隔実験に切り替えることもできない。対面での実験が可能になり次第、残りわずか2セッション分のデータを取得できるよう、被験者プールの維持と管理を継続したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2020度における重要な課題は2010年の地域枠導入後における医師初期臨床研修マッチング再検討であった。地域枠は2010年に導入されたが、その分析に適用される安定性概念を幾分緩和する必要があったことがこの課題の背景にある。安定集合と呼ばれるその概念は取り扱いが非常に難しく、いくつかの例は作成できているが、一般的な定理の証明にまでは辿り着いていない。そこで、2021年度には、繰り越した研究費から若手研究者を短期雇用し、計算機による分析を進める。 一方、本研究におけるこれまでの実験結果を受けて、理論が想定する行動をとらないマッチング参加者がいる場合でも割当の頑健性をある程度保証しうるアル ゴリズムを模索することが重要な研究課題であった。この課題に対しても、計算機の量による探索を行いたい。また、実験において観察された被験者の行動を取り出し、計算機実験によって、それらと理論上もっともらしい行動をどのように組み合わせたときに、現在のアルゴリズムではどのような問題が生じるかを明確にする。
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Causes of Carryover |
2020年度には学外に出向いての研究発表と対面での被験者実験を予定していたが、緊急事態宣言発出による海外渡航の禁止措置と感染拡大防止のための実験停止措置がとられたため、その解除後の出張や実験のための資金として相当な額を保持していた。2021年度初めの時点でも緊急事態宣言再発出がなされることになったので、計算機実験の割合を増やし、計算機コードを作成するために若手研究者を短期雇用することで前年度分を支出し、更なる研究成果につなげる。
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Research Products
(17 results)