2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Millimetric Adaptive Optics
Project/Area Number |
17H06206
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田村 陽一 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10608764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川邊 良平 国立天文台, 電波研究部, 教授 (10195141)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 補償光学 / ミリ波 / 電波望遠鏡 / 計測工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
電波望遠鏡において、鏡面精度を担保したままアンテナを大口径化・高周波(テラヘルツ)化することは、あらたな天文学領域を開拓するうえで重要である。本研究課題では、既存あるいは将来の地上ミリ波サブミリ波望遠鏡に搭載し、風負荷・熱変形・重力変形による(主)鏡面精度の低下を実時間で補償する光学システム「ミリ波補償光学」の基礎研究を行う。本研究では、電波天文学のネイティブな波面計測技術である開口合成干渉法を利用した波面計測システムを提案し、低周波数(20GHz)かつ少数素子(5素子)の波面計測システムを開発し、野辺山45m望遠鏡に搭載して、40ミクロンr.m.s.の精度で実時間の波面測定が可能なことを実証することを目的とした。 本年度は、以下の3点を実施する計画を進めた。当初の計画に対して、広帯域雑音を参照光源とするより高確度の波面計測原理を考案したため、仕様と設計の変更が生じたが、これによってより実現可能性の高い波面センサーとなった。 (1) 波面計測センサの開発:波面センサ用相関器をメーカと共同で設計・開発した。また、後述の参照光源を含めた全計測系を統御する制御ソフトウェアの開発を開始した。 (2) 鏡面変形センサの導入:加速度センサの調達・実験室での制御試験、小型(4m)電波望遠鏡での変形検出試験及び変形量計測手法の開発を行った。また、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の協力の下、一部のセンサを大型(45m)電波望遠鏡に設置し、変形計測を開始した。 (3) 波面センサの参照光源の開発:開口合成型干渉計で利用される広帯域雑音を光源とする光路長遅延量の計測原理を応用した、高確度の波面計測原理を考案した。これを実現する参照雑音信号発生器、光伝送系、放射器の開発を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波面センサの開発、変形計測センサの導入等、当初計画に照らして概ね順調に進展している。波面センサの開発に関しては、単一周波数の人工電波源を参照光源とした当初の概念設計に対して、広帯域雑音を参照光源とするより高確度の波面計測原理を考案し、仕様と設計の変更によって計画の遅れが生じたが、これによってより信頼性の高い波面センサーを実現できる見込みとなった。変形計測センサの導入に関しては、実験室内での試験にとどまる当初の計画に対して、野辺山45m電波望遠鏡への搭載や変形計測手法の確立が進むなど、大きい進展があった。 また、国内学会やシンポジウムでの口頭・ポスター発表、国際会議での口頭発表等、「ミリ波補償光学」という新しいコンセプトの光学計測手法や開発進捗の周知を実施し、国際的にもビジビリティを高めつつあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 波面計測センサの開発:広帯域雑音を参照光源とするコンセプトのもと、相関器サブシステムの試験や制御系の開発、参照雑音発生器・光伝送系・信号時分割光スイッチ・放射器を含む送信機サブシステムの開発を進める。これらを統合する制御・解析ソフトウェアの開発も同時に進め、2019年度に実験室内での総合試験を実施する。 (2) 鏡面変形センサの計測:これまでに確立した加速度計を用いた望遠鏡主鏡構造変形量の計測方法を、国立天文台野辺山45m電波望遠鏡に適用する。熱・風負荷等の様々な外的要因が存在する環境下で主鏡構造変形・振動の計測を行い、変形のモードや要因の考察を進める。 (3)波面計測センサと変形センサを用いたミリ波補償光学の総合実証試験:上記に基づき、2020年度に野辺山45m望遠鏡にセンサを設置し、その立ち上げを行った上で、ミリ波における波面計測センサ技術の実証試験を実施する。これらにより得られた結果をすみやかにまとめ、論文等で成果を発信する。
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