2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of technology for fast energy conversion between electrons and phonons towards emerging phono-electronics
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17H06211
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小野 行徳 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80374073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Moraru Daniel 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (60549715)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | フォノン / エネルギー散逸 / シリコン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、「ホットキャリアから放出された高エネルギーフォノンが低エネルギー熱フォノンに分解し、エネルギーが拡散(散逸)するより速く、そのエネルギーを電子エネルギーに再変換する」というものである。その時間スケールは1 ー 100 psであり、MOSトランジスタのスイッチング時間と同程度である。したがって本研究では、このような高速な電子系―格子系エネルギー変換のための二つの基幹技術を構築することが大きな目標の一つとなる。 今年度、電子流体効果をシリコンにおいてはじめて観測し、フォノンによるエネルギー散逸を避けて電流増幅が可能であることを示した(Nature Communications. 2018)。この結果は、本来、電子の流れの中で熱として散逸するエネルギーを電子―電子散乱を用いて他の電子に移送することにより、電流増幅を実現するというものであり、電子―格子系エネルギー変換において、電子―電子散乱が本質的に重要な役割を担っていることを示している。同時に、新たな低消費電力デバイスの可能性を示すものである。 また、ホットキャリアから生成される電子・正孔対(インパクト・イオン化)を単一事象レベルで検出する手法を提案し、その基本要素である単一正孔の検出に成功した(Applied Physics Letters, 2018)。この結果は、インパクト・イオン化の逆過程であるバンド間オージェ散乱と組み合わせることにより、新たなエネルギー散逸制御手法を提示するものであり、今後のフォノン制御技術確立のためにも重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
概要の項に記したように、電子-電子散乱を用いたフォノン放出制御可能性を示す結果が新たに得られており、予想外の成果を得ることができた。同結果は、Nature Communicationsに採択され、報道発表を行うとともに、日本経済新聞等に研究成果が掲載された。 また、ホットキャリアから生成される電子・正孔対を単一事象レベルで検出する手法を提案し、同結果を、Applied Physics Letters誌に投稿し採択された。この結果は、エネルギー散逸制御の新たな手法を提示するこのであり、今後のフォノン制御技術確立のための重要な知見となる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の結果を受けて、ナノスケールでの電子―電子散乱とエネルギー散逸既報との関係を詳細に調べる。特に、デバイス動作の高温化(現在は8ケルビン)のための、散乱阻害要因を明らかにする。また、高速制御技術確立のために、MOS電子系の短時間パルス電流発生技術の確立に取り組む。本計画において、代表者小野は、測定系構築と測定を担務する。一方、分担者モラルはデバイス試作を担務する。
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