2020 Fiscal Year Research-status Report
新原理エレクトロニクス創成に向けた電子系-格子系・高速エネルギー変換技術の確立
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20K20289
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小野 行徳 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (80374073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Moraru Daniel 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (60549715)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォノン / エネルギー散逸 / シリコン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は、「ホットキャリアから放出された高エネルギーフォノンが低エネルギー熱フォノンに分解し、エネルギーが拡散(散逸)するより速く、そのエネルギーを電子エネルギーに再変換する」というものである。その時間スケールは1 ー 100 psであり、MOSトランジスタのスイッチング時間と同程度である。したがって本研究では、このような高速な電子系―格子系エネルギー変換のための二つの基幹技術を構築することが大きな目標の一つとなる。 これまでに、電子流体効果をシリコンにおいてはじめて観測し、フォノンによるエネルギー散逸を避けて電流増幅が可能であることを示し、電子流体効果が、電流経路における摩擦(抵抗)により律速されていることを明らかにしている。これらの結果は、電子―格子系エネルギー変換において、電子―電子散乱が本質的に重要な役割を担っていることを示す結果である。また、あらたにシリコンのナノデバイスにおいて、弾道電子の直接観測に成功したことを受け、本年度は、弾道電子の室温観測を目指して試作を開始した。同試作においては、単一のフォノン検出のためのデバイスやフォノンの振動分光検出のためのデバイスも盛り込んでいる。現在、第一層の細線加工プロセスまで終了している。さらに、シリコンエサキダイオードにおいて、10Kの温度で光学、および音響フォノンの放出現象の観測にあらたに成功した。これは、光学、および音響フォノンの個別制御に道を拓くものであり、今後、MOSデバイスとの混載により、フォノンの送受信の実験に取り込めることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナによる在宅勤務などの影響により、デバイス試作が滞っており、半年遅れで推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
デバイス試作を加速させ、次年度前半を目途に完了し、測定を開始する。特に、室温における弾道電子の観測と、フォノン放出過程の直接観測、また、単一フォノンレベルでの少数フォノンの検出のための測定に注力する。また、シリコンエサキダイオードにおいて、光学、および音響フォノンの放出現象の観測に新たに成功したことを受け、当該フォノンのMOSFETによる検出手法を検討し、シリコンデバイス間で、フォノンの送受信が可能であることを実証する。 本計画において、代表者小野は、測定系構築と測定、およびデバイス試作を担務し、全体の取りまとめも行う。分担者モラルはデバイス試作を担務する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により、一部の計画の中断を余儀なくされ、このため、予定していた研究員の雇用を取りやめたため。次年度は、研究員雇用のための人件費として使用する。
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Research Products
(5 results)