2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K20295
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Quantum Chemistry Research Institute |
Principal Investigator |
中辻 博 認定NPO法人量子化学研究協会, 研究所, 理事長 (90026211)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 相対論的量子化学 / ディラック・クーロン方程式 / シュレーディンガー方程式 / Chemical Formula Theory / 重い元素の化学 / 元素戦略 / スケ―ルド・シュレーディンガー方程式 / スケ―リング関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学の世界を支配する量子力学の原理は、主に非相対論的なシュレーディンガー方程式と、相対論的なディラック方程式によって書かれる。研究代表者は2000年から2004年の研究によって、それまで不可能と考えられていたシュレーディンガー方程式の一般的解法を世界で初めて発見した。その後、その理論を出発点として、真に予言的な量子化学理論を構築するための研究を重ね、色々な成果を収めてきた。その研究対象をさらに重い原子を含む系にまで広げると、いわゆる相対論効果が重要になり、シュレーディンガー方程式だけでなく、ディラック・クーロン方程式を厳密に解く理論と方法が必要になる。これに対応して、我々は2005年にディラック・クーロン方程式を厳密に解くための一般解法を提案し、その後も引き続き、その応用研究なども発表してきた。 昨年来、申請者らは、Scaled Schroedinger equationのscaling functionの一般化に精力的に取り組み、シュレーディンガー方程式の解をより速く高精度にすることに成功した。本研究では、この理論を、ディラック・クーロン方程式にも拡張することを試みている。ただ、この理論で生じる新たなscaling functionは、シュレーディンガー方程式の解法においてすら積分法はほぼ不可能で、私達のLSE法のようなサンプリング法によらねばならない。しかしメトロポリス法のような確率論的な方法は、新たな不確実性を持ち込む危険もあり、直接法(逆変換法)を用いる。本研究では、その方法を相対論的量子化学に応用するための準備を進めている。また、この方法とは別に、やはりシュレーディンガー方程式の解法として考案した積分法を可能にするFC sij理論を、相対論的量子化学に応用する可能性も考察している。これ等の研究により、相対論的量子化学も新しい展開が可能になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シュレーディンガー方程式と同様、ディラック・クーロン方程式も、原子・分子系の量子化学については不完全であり、これを克服するためにはScaled Dirac-Coulomb方程式を導入することが必要であることは、2005年の論文(Phys. Rev. Lett. 95. 050407 (2005))に発表した通りである。この理論に加えて上の概要に記した通り、最近のScaled Schroedinger equationの一般化に伴うscaling functionの拡張を、Scaled Dirac-Coulomb方程式についても試みている。これらの関数は、積分の計算が今の数学ではほぼ不可能であり、シュレーディンガー方程式の解を求める時のLSE(Local Schroedinger equation)法と同様、Local Dirac-Coulombic equation (LDCE)法を整備する必要があり、その展開を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年も書いたように、ディラック・クーロン方程式は構造的にシュレーディンガー方程式よりもはるかに複雑であり、それが相対論的研究を困難、かつ分かりにくくしている。現在取り組んでいる理論は、形式的には旧来の理論構造を踏襲できるが、とくに、エネルギーや波動関数を求める段階で、積分法を回避し、ディラック・クーロン方程式をそのまま用いることになるので、本来の理論展開が可能になる。これによって、相対論的研究をより使い易く、分かりやすくする効果も大きい。理論として正確であると共に、その解法が容易である事、その研究が理解に結び付き、化学的直観を刺激してより良い化学理論を生み出す基礎になること、これらを今後も研究推進の要として大切にしたいと考えている。
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Research Products
(3 results)