2018 Fiscal Year Annual Research Report
How fast can E. coli grow? - Investigating the efficiency limit of a proliferation system
Project/Area Number |
17H06254
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北原 圭 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (30567855)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 健太郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (60344123)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 大腸菌 / バクテリア / 増殖速度 / バクテリアゲノム / 培養 / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌をモデル生物とし、バクテリアの最大増殖速度が一定の値に収束するメカニズムを明らかにする研究を行った。 まず、様々な合成培地あるいは天然培地等を多数入手し、複数の大腸菌株の増殖速度を精密に測定する実験を行った。その結果、既存の培地の増殖支持性能を網羅的にリスト化することができた。加えて、さまざまな化合物あるいは天然成分を抽出したものの中から、既存の培地の増殖促進能をよりよくサポート可能な添加剤のスクリーニングを行い、極めて良好な結果を得ることに成功した。 続いて、遺伝学的なアプローチを用た、申請書記載のとおりの検討を行った。この実験のアプローチはシンプルであるものの、比較的大規模な実験を行う必要があったため、新型装置を新たに導入した。その結果、実験効率を大幅に高めることに成功した。本実験は順調に進行中である。 ところでビブリオ属細菌一部は倍加時間約10分で増殖することが知られているほか、クロストリジウム属細菌の一部は10分を大幅に下回る倍加時間で増殖することが知られている。2018年度の研究では、そのような細菌ゲノムを解析し、大腸菌のものと比較するアプローチを用いて、大腸菌の増殖速度をより上昇させるための研究も開始しており、興味深いデータが得られ始めている。関連して、クロストリジウムが嫌気性細菌であることに着目して、嫌気条件下での大腸菌の増殖速度が最も早くなる条件の検討も行っており、その結果は現在解析中である。 本研究テーマに関しては、北海道大学アカデミックファンタジスタ事業の一環として、北海道札幌南高校の生徒にアウトリーチ授業を行った。アンケート結果は非常に高評価であったため、2019年度以降も積極的にアウトリーチ活動を行っていきたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バクテリアの最大増殖速度は基本的でありながらあまり注目されない表現型である。本研究では、バクテリアのそれぞれの株は固有の最大増殖速度を有し、その値は遺伝的に規定されていると仮定している。本研究では大腸菌をモデル生物とし、バクテリアの最大増殖速度が決定されるメカニズムを明らかにする研究を行ってきた。 今年度の大きな進展の一つとしては、様々な合成培地あるいは天然培地等を用いて、複数の大腸菌株の増殖速度を精密に測定する実験を行った点である。その結果、既存の培地の増殖支持性能を網羅的にリスト化することができた。このリストは、培地と一口に言っても増殖支持能はきわめて多様であり、培地の成分の組み合わせごとに特徴的な増殖支持能を発揮することを明確に示していた。一方で、本研究が仮定する最大増殖速度の固有性に関しても強く支持する結果であった。関連研究として、さまざまな化合物あるいは天然成分から添加剤をスクリーニングする研究では意外な素材が見つかったため、それを微生物の一般的な培養基剤として応用できないか検討を行っている。 約10分の倍加時間で増殖することが可能なビブリオ属細菌を用いた研究も開始したが、この研究を通して、ガンマプロテオバクテリアの中でも特にビブリオ属近縁の細菌が高速で増殖可能なメカニズムを解明したいと考えている。一方、クロストリジウム属細菌の一部は10分を大幅に下回る倍加時間で増殖することが知られており、そのようなバクテリアを用いて同様の研究を行うこともよいアイデアなのではないかと考えている。クロストリジウムを用いた実験は様々な制約要因があり、実現に至ってはいないが、今後の方向性としてはクロストリジウムを用いた研究にもチャレンジしていきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請書記載の実験項目に関しては順調に進行している。研究テーマをさらに広げるとともに奥行きを持たせるために、大腸菌以外のバクテリアも用いた研究を今後積極的に行っていく予定である。大腸菌を用いた遺伝学的な手法だけではなく、例えば環境中から増殖速度が速い微生物株をスクリーニングし、そのゲノムを大腸菌のものと比較するといったアプローチを用いれば、大腸菌をより早く増殖させることにつながるのではないかと考えている。アイデアは様々なものがあるため、一つ一つ検討していき、研究をさらに深堀していきたい。
|
Research Products
(1 results)