2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of regulating system of fetal cardiovascular development via reassessment of substance transport in fetal circulation
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17H06272
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
毛利 聡 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00294413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 孝祐 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (00351883)
花島 章 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70572981)
橋本 謙 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80341080)
氏原 嘉洋 名古屋工業大学, 工学研究科, 准教授 (80610021)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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Keywords | 胎児循環 / 低酸素 / 心筋細胞 / 分裂能 / コネクチン / Novex-3 / 胎盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎児期心筋細胞の分裂能維持には子宮内の低酸素環境が必須であり、培養細胞実験にて数時間レベルの一時的な大気酸素濃度への曝露でも細胞分裂停止のシグナルとなり得ることを明らかにした。そして、生体内での酸素濃度と細胞分裂の関係を定量的に評価するために、レーザーによるリン光系有機色素の光化学反応を利用した生体の酸素濃度計測システムの構築を行った。血液中に酸素濃度に依存して発光寿命が変化するポルフィリンを投与し、Nd:YAGレーザーによる励起によるリン光の減衰を計測・解析することで、生体組織でガス交換を行っている毛細血管や内部血液を透過して観察できる細動脈や細静脈の酸素分圧を計測するシステムを構築し、麻酔下にラットなどの細動静脈や毛細血管内の酸素分圧のリアルタイム計測を可能にした。また、胎内での低酸素環境から出生後の高濃度酸素環境への変化により発現量が著減することが明らかになった筋サルコメアの巨大弾性蛋白コネクチン(タイチン)のスプライスバリアントであるnovex-3の細胞周期への関与を検討した。novex-3が低酸素環境下のマウス胎児心筋細胞においてはサルコメアだけでなく、核にも発現することを見出した。しかし、出生後は肺呼吸開始に伴う酸素上昇により、novex-3の核での発現は殆ど見られなかった。novex-3のノックダウンにより細胞周期遺伝子の発現は低下し、心筋分裂も抑制された。一方、novex-3の過剰発現は心筋分裂を促進した。原子間力顕微鏡を用いた解析により、novex-3は核ラミンのリン酸化による高次構造の分解により核に柔軟性を与えることで心筋分裂を促進している可能性が示唆された。以上より、コネクチンnovex-3はサルコメアでの弾性制御だけでなく、胎児期には心筋細胞の核に局在することで活発な心筋分裂を維持していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体内微小酸素環境計測システムに関しては、慶應大学塚田研究室との共同研究により血管壁を透過できる細動静脈や毛細血管での測定が可能になった。計測の具体例として、ラット腎臓動静脈の酸素分圧やアフリカツメガエル、アホロートルなどの動物の体表血管や深部臓器血管を測定できた。今後は二次元スキャンにより組織内酸素分布を可能にできるよう計測システムの改良に取り組む準備が整った。胎児循環の物質輸送に関するテーマに関しても胎内低酸素環境維持と出生後の高濃度酸素濃度曝露による細胞周期調節遺伝子発現変化を検討し、novex-3の高発現マウスを作成して心機能や心臓微細構造の検討を行っている。また、酸素以外にも胎児循環におけるアミノ酸、脂肪酸、乳酸、脂肪酸などの濃度測定を行い、出生前後で変化の大きな物質の細胞周期への関与について検討を行っており、研究は概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度にNd:YAGレーザーによる励起によるリン光を用いた微小環境酸素分圧測定系のレーザー・光学系の基礎部分が完成したため、本年度は二次元スキャンによる組織酸素の高度情報の取得に取り組む。本研究では胎児循環の酸素運搬制御評価を目的としており、並走する臍帯動静脈内の酸素濃度をリアルタイム計測し、母体側の動脈血酸素分圧変化にどのように応答するかを定量評価することが大きな目標の一つである。従って、二次元スキャンを自動化して胎盤を含めた胎児循環の酸素運搬特性評価が必要である。また、血液よりも酸素運搬に関して下流の心臓組織の酸素濃度評価のために異なる修飾を施したポルフィリンによる計測についても検討する。酸素以外の物質輸送に関してはラットを用いて、胎児・新生児・成体にて血液中のアミノ酸、脂肪酸などの濃度比較によって出生前後で非常に大きな増減(最大で数百倍の変化)を示す候補物質を同定しており、低酸素下で採取・培養された心筋細胞を用いて細胞分裂への影響を多段階の酸素濃度下において定量的に検討する。また、酸素濃度とアミノ酸・脂肪酸などの基質の相互作用に関してもこれまでに報告されておらず、これらの胎盤を介した選択的な物質輸送による胎児組織の細胞周期制御の情報は基礎研究のみならず遺伝子レベルでの介入による試みが主流である再生医療研究にも異なる階層からの情報提供により貢献することを目指す。
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Research Products
(4 results)