2020 Fiscal Year Research-status Report
人工内耳技術と蝸牛神経再生の融合による新規難聴治療法の開発
Project/Area Number |
20K20307
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Research Institute, Shiga Medical Center |
Principal Investigator |
伊藤 壽一 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 特任上席研究員 (90176339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 幸司 京都大学, 医学研究科, 助教 (20405765)
扇田 秀章 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 専門研究員 (20761274)
大西 弘恵 京都大学, 医学研究科, 研究員 (50397634)
山本 典生 京都大学, 医学研究科, 准教授 (70378644)
田浦 晶子 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (70515345)
松本 昌宏 滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 専門研究員 (80773811)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内耳 / 再生 / オルガノイド / ロボット手術 / 難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
感音難聴(特に高度感音難聴)は治療不可であったが、人工内耳が臨床応用されるに至り、世界中で50万人以上の難聴患者がその恩恵を受けている。人工内耳装用者の聴覚の質は健聴者と比べて劣る。特に雑音下での聞き取り、音楽の聞き取りが不良である。その理由は、(1)人工内耳と蝸牛神経の接合が生理的な蝸牛有毛細胞と蝸牛神経の神経結合と比較し大きな隔たりがある、(2) 聴覚閾値上のコーディングに重要な蝸牛神経が高度に障害されていることなどが考えられる。これらを解決するためには、(1)に関しては、人工内耳からの刺激を、従来の電気刺激だけでなく、さらに局所的な刺激が可能である光刺激に変更することが考えられる。(2)に関しては、刺激を受け、中枢に伝達する蝸牛神経(ラセン神経節細胞)の数を増やす必要がある。 本研究の目的は、現在医療として一定の評価を得ている人工内耳と細胞移植による蝸牛神経再生技術を融合させて、さらに新しい刺激の人工内耳を開発することにより、高度感音難聴患者に質の良い聴覚を回復せしめるための基礎研究を行うことである。 以上の目的を遂行するための研究計画を以下に挙げる。1)高度感音難聴患者の病態を模した難聴動物モデル動物を作成する。2)移植細胞のソースとなる蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS細胞から誘導する。3)ヒトiPS細胞由来聴神経と人工内耳、あるいは中枢の蝸牛神経核との結合をin vitroで検証する。4)難聴動物モデルに細胞移植+人工内耳同時手術を行い、蝸牛神経再生の確認、聴覚機能再生を図る。5)移植細胞にチャンネルロドプシン遺伝子を導入し、人工内耳からの刺激を電気ではなく、光によって行い、その刺激で移植された蝸牛神経細胞を興奮させ、よりシャープな刺激が可能か、より良好な聴力が得られるかを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、新しい人工内耳技術と蝸牛神経再生技術を融合させ、高度難聴者に対する新規難聴治療法を開発するための基礎研究をその目的とする。そのための計画として、以下の研究計画を作成した。 1)高度感音難聴患者の病態を模した難聴動物モデル動物を作成する。2)移植細胞のソースとなる蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS細胞から誘導する。3)ヒトiPS細胞由来聴神経と人工内耳、あるいは中枢の蝸牛神経核との結合をin vitroで検証する。4)難聴動物モデルに細胞移植+人工内耳同時手術を行い、蝸牛神経再生の確認、聴覚機能再生を図る。5)移植細胞にチャンネルロドプシン遺伝子を導入し、人工内耳からの刺激を電気ではなく、光によって行い、その刺激で移植された蝸牛神経細胞を興奮させ、よりシャープな刺激が可能か、より良好な聴力が得られるかを検証する。 平成29年度から令和2年度にかけ、1)難聴モデル動物の作製は完成。2)移植細胞のソースとなる蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS細胞から誘導する研究も完成した。3)「ヒトiPS細胞由来聴神経と人工内耳、あるいは中枢の蝸牛神経核との結合をin vitroで検証する」に関しては、まだ検証中である。4)「難聴動物モデルに細胞移植+人工内耳同時手術を行い、蝸牛神経再生の確認、聴覚機能再生を図る」に関しては、難聴動物モデルの内耳にヒトiPS細胞由来聴神経前駆細胞を移植し、蝸牛神経の再生を確認し、一部聴覚が回復することも確認した。 5)「移植細胞にチャンネルロドプシン遺伝子を導入し、人工内耳からの刺激を電気ではなく、光によって行い、その刺激で移植された蝸牛神経細胞を興奮させ、よりシャープな刺激が可能か、より良好な聴力が得られるかを検証する」に関しては、数回実験を試みたが、十分な出力の光刺激人工内耳を作製することができず、まだ結果は得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画は、1)高度感音難聴患者の病態を模した難聴動物モデル動物の作成。2)移植細胞のソースとなる蝸牛神経前駆細胞をヒトiPS細胞から誘導。3)ヒトiPS細胞由来聴神経と人工内耳、あるいは中枢の蝸牛神経核との結合をin vitroで検証。4)難聴動物モデルに細胞移植+人工内耳同時手術を行い、蝸牛神経再生の確認、聴覚機能再生を図る。5)移植細胞にチャンネルロドプシン遺伝子を導入し、光刺激人工内耳での聴覚回復を検証、などであった。平成29年度から令和1年度は順調に推移したが、主に5)を計画した令和2年度は十分な出力が得られる光刺激装置、チャンネルロドプシン遺伝子を導入するウイルスベクターなどを入手できず、研究が停滞したため、また各所での発表機会も減少したため、研究期間の1年間の延長をお願いした。幸い令和3年度は、光刺激装置、各種試薬などの入手の目途が付き、計画5)を遂行できると考えられる。また細胞移植手技の際、これまでは、用手的、3軸マニュピュレーターを用いて行っているが、正確な位置に細胞を移植するには、ややばらつきが多い。このため、可能であれば令和3年度は我々の開発した手術用ロボットも用い、より正確な移植を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画5項目の内、令和2年度は特に、4)難聴動物モデルに細胞移植+人工内耳同時手術を行い、蝸牛神経再生の確認、聴覚機能再生を図る。5)移植細胞にチャンネルロドプシン遺伝子を導入し、光刺激人工内耳での聴覚回復を検証、することであった。令和2年度は、COVID19の為と思われるが、各種試薬、機器の導入が大きく滞った。主に5)を計画した令和2年度は十分な出力が得られる光刺激装置、チャンネルロドプシン遺伝子を導入するウイルスベクターなどを入手できず、研究が停滞した。また国内外での発表機会も激減したため、当初の予算と大きく乖離することとなった。 幸い令和3年度は、各種機器、各種試薬などの入手の目途が付き、令和2年度で使用しなかった一部の予算を令和3年度に使用する予定である。
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Research Products
(10 results)