2017 Fiscal Year Annual Research Report
Application of computational origami to cell origami
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17H06287
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00256471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀山 貴史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (60314530)
繁富 香織 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任准教授 (90431816)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞折り紙 / 計算折り紙 / 展開図 / 多面体 / 列挙アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「細胞折り紙」という新しい研究分野の推進を目的としている.細胞折り紙とは,薄いマイクロサイズのプレートを配置し,その上に細胞をばらまき,育成することで,細胞の引きよせる力によってプレートを立体化させるというものである.例えば幹細胞では,細胞の形状から機能が決まったり機能分化が起こることが知られている.つまり細胞の形状を人間が制御できれば,細胞の分化を制御し狙った臓器を組織可能になると考えられる.一方,細胞を狙った形状に立体化するには,コストや技術の面で困難な点が多い.そこで平坦な面の上に適切にプレートを配置し,それを細胞に折らせることで,細胞が自発的に立体化することを目指すのが細胞折り紙である. 本研究では,意図した形状のミクロサイズの立体を,細胞を用いて効率良く折るための技法を確立することを目標としている.そのためには,立体をうまく展開して展開図を作り,そこから折り紙の要領で,目指す立体を形成するように細胞をうまく誘導・制御する必要がある.そこで本研究では「細胞にとって折りやすい展開図」の定式化と評価を行う.例えば立方体には11種類の展開図が存在することが知られているが,その中のどの展開図が細胞にとって折りやすいかという問題は未解決である. この研究では理論面でのモデル化・定式化と,実験による確認とがどちらも重要である.当該年度,理論面では,展開図の「細胞にとっての折りやすさ」を物理面,数理面から検討した.具体的にいくつかのモデルを提案し,妥当性について検討した.実際の実験の結果を見なければわからない点がいくつか残った.実験面では,さまざまな展開図の作図に関する技法を開発した.実際のパターンの生成などができるようになり,実際の細胞を用いた実験の準備が整った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,理論的なモデルの検討と,実験のための下準備ができたと考えられる.理論的なモデルについては,1次方程式で表現できる静的なバランスと,2次方程式で表現できる動的なバランスをそれぞれ評価できることが明確になり,細胞にとっての折りやすさが,「力」という1次の項と「エネルギー」という2次の項で表現可能そうであることが明確になった.実験に際しては,多くの展開図の中から適切なものを選び,そのコピーを大量に描画する必要がある.こうした実験の下準備にあたる「描画」をある程度自動化することに成功し,機械的なパターン生成が可能となった.これは細胞折り紙の実験の準備としては最も手がかかると予想された部分であり,この部分が比較的容易に実現できるようになったことは,初年度の研究の大きな前進であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
実験については,準備が整い次第,実際の細胞で実施する予定である.理論面については,その実験結果が,ある程度揃った段階でないと,先に進めることは難しい.特に「力」と「エネルギー」のどちらが主要な項になるのかは,理論だけでははかりしれない.また,理論化するにあたって単純化したいくつかの要素が,実際の実験において,本当に無視してよいかどうかは,やってみなければわからない.特に懸念される事項としては,「細胞の腕の長さ」がある.現在は隣接したプレートを互いに垂直方向に引きよせると考えてモデル化しているが,実際には細胞は,いわば腕を使って引きよせるのであって,その長さや方向性に自由度がある.例えば斜め方向に離れたプレートを引きよせるということも観察されており,プレートの固定方法によっては,プレートがずれることも考えられる.こうした単純化によるエラーを減らすべく,理論を精緻化するための基礎的な実験データを求めることが必要である.
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