2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K20311
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00256471)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀山 貴史 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60314530)
繁富 香織 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任准教授 (90431816)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞折り紙 / 計算折り紙 / 多面体 / 展開図 / アルゴリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に新型コロナウィルス感染症対策に翻弄された年であった。当初のプランでは立方体の展開図を細胞に折らせる実験を進めることと並行して、新たに切頂8面体の展開図も研究対象に加え、これについても実証実験と、それに基づくモデル化を行う予定であった。しかし新型コロナウィルス感染症対策のために対面でのミーティングが実施できず、実験全体の進捗も思わしくなかった。特にこれまでは予想していなかった、展開図一つあたりに配置される細胞の個数のムラ、アルギン酸の塗りムラ、湿度によって生成されるパターンの厚みのムラといった実験条件のばらつきにより、安定した結果が得られず、理想化やモデル化に支障をきたした。切頂8面体の展開図の列挙は終了し、実際のパターンの設計もある程度は完成したが、こうした実験のムラによる障害を回避するためには、当初の予定よりもパターン同士の間を空ける必要があり、実験については準備段階にある。 本研究プロジェクトに関連して2020年度は書籍を1冊、ジャーナル論文を7本(計算折り紙に関する論文4、グラフ構造に関する論文2、平面図形に関する論文1)出版した。 また国際会議での発表を5回(計算折り紙に関する論文2、グラフ構造に関する論文2、平面図形に関する論文1)行った。特に計算折り紙については、展開図から凸立体を折れるかどうかを判定する問題について研究し、昨年度までに得られていた結果を大きく改善することに成功した。具体的には、従来知られていたクラスよりもさらに大きなクラスに対して、極めて効率の良いアルゴリズムを提案した。この結果は、本プロジェクトに止まらず、今後、計算折り紙のアルゴリズム分野において、大きな意義を持つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、理論的な面の研究と同時に、実際の実験を行ない、その結果のフィードバックによる理論の精緻化が重要である。しかし新型コロナウィルス感染予防や予想外の実験結果のばらつきなどに伴う実験面での遅れがあり、それに引きずられる形で理論的なモデルの妥当性の評価が遅れ、結果的に理論モデルの構築にも遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はすでに得られた立方体の展開図に関する結果をもとに、ある程度の推測も加えて理論的なモデルをある程度確立し、その理論から予想される結果に基づいて切頂8面体の展開図に対する実験を行い、理論モデルの妥当性を評価する。特に細胞折り紙では、直接隣接しない面同士の間を細胞が腕を伸ばす形で引っ張るという現象が顕著に見られる。こうした現象は現時点では正確にモデル化することは難しい。しかし実験と並行してこうした現象のモデル化を行い、双方を突き合わせることで精緻化を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本研究では、実験による実証とそれに基づく理論化が大切であり、これらは相補的に互いに密にフィードバックをかけつつ前に進める必要がある。ところが2018年度の札幌大規模停電、2019年度の実験担当者の妊娠と出産、2020年度の新型コロナウィルスによる各種不都合に加えて、湿度や各種実験条件による結果のばらつきもあり、全体的に研究は後ろ倒しに遅れが蓄積している。そのために次年度への繰越しが必要となった。 2021年度の前半はまず、立方体の展開図に関する実験結果に基づく一次モデルの確立と、切頂8面体の11種類の展開図に関する実験を並行して実施する。年度半ばには、立方体の展開図の実験に基づく一次モデルを用いて切頂8面体の展開図を評価し、モデルの妥当性を検討する。検討の結果を反映し、モデルを精緻化して2次モデルを構築することを目指す。一連の研究計画の中で、特に切頂8面体の展開図のパターンを基盤上に印刷してアルギン酸で固着させ、その上に実際に細胞を散布する実験は何度か繰り返す必要がある。次年度使用額で繰り越した予算は、この実験に必要な薬品の購入、パターンの印刷、補助員の人件費などを中心に使用する計画である。
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Research Products
(10 results)