2019 Fiscal Year Annual Research Report
動物活動の定量計測と非線形時系列解析による、老化を支配する力学系システムの解明
Project/Area Number |
18H05300
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
荒田 幸信 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (40360482)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
|
Keywords | 長時間計測 / 高時間分解計測 / 老化 / 寿命 / 線虫 / ライフログ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、線虫の活動を寿命時間(約一ヶ月間)に渡りビデオ撮影(5fps)し、得られた動画から線虫の運動を計測することで得られる巨大な時系列(ライフログ)から、動物の寿命時間を決定するモデル(力学系の方程式)を決定することである。これまでに、1000匹以上の線虫個体を同時に撮影することができる装置を構築し、野生型、野生型に比べ寿命が短くなるまたは長くなる6種類の変異体についてそれぞれ500匹以上の個体一生を撮影した。本予算では、ライフログの取得をさらに効率よく進めるため、もう一台計測装置を設置した。新しい計測装置により600匹の線虫を撮影するキャパシティーが生まれ、これまでに構築した撮影装置と合わせて2400匹の線虫のライフログを同時に取得できるようになった。ライフログの解析から、寿命曲線だけでなく、運動の指数減衰の速度それぞれの変異体の寿命に応じて変化することを見つけた。また、老化に伴う運動の指数減衰の背後にはトランスポゾンによるマルコフ的なゲノム破壊がある、という作業仮説を立てた。この仮説を検証するために、トランスポゾンの転移を分子生物学的な手法を用いて包括的に抑制するためのベクターシステムの構築を行なった。具体的には、機能抑制のためにCas9を用いた遺伝子ノックアウトとRNAiを用いたノックダウンを行う。灰尾インフォマティックスにより線虫ゲノムに存在するトランスポゾンを包括的に同定し、その中から転移活性を維持するトランスポゾンを同定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計測装置の設置が終了し、順調に一生時間スケールのビデオ撮影が進んでいる。動画の解析により当初予定していた老化を支配する基本的な動態が明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
計測によって得られた老化に伴う指数減衰と寿命曲線のデータを統合的に解析するために、Reliability theoryが提案するモデルを得られた曲線にfitすることにより、変異体間で老化の動態を生み出すシステムの特性がどのように異なるかを整理する。また、トランスポゾンの転移を抑制した線虫株の老化に伴う運動活性の減衰と寿命分布の曲線も同様の解析を行うことにより、老化を駆動する分子反応ネットワークのモデルを明らかにする。
|
Research Products
(4 results)