2019 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙線生成核種の分析にもとづく断層活動度の新しい評価法の開発と検証
Project/Area Number |
18H05308
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
松崎 浩之 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (60313194)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 加速器質量分析 / 活断層 / 削剥速度 / 山地流域 / テクトニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,計画されていた九州・四国・中国地方での野外調査に加え,2018年9月に発生した胆振東部地震を受け,北海道を調査地域に加えて地形地質調査や試料採取を行った.さらに,中部地方の横ずれ断層についても,対象を選定のうえ試料採取候補地点を絞り込み,浅部地盤構造の調査を行った.また,近畿地方南部丘陵を対象に,流域の削剥速度変遷をとらえるための渓流堆砂や低位段丘堆積物のボーリング試料の採取・分析を行ったほか,既存の大深度地質ボーリングを活用するアプローチを新たに見出し,六甲山南縁の大阪層群相当層に含まれる宇宙線生成核種の分析を行った.その結果,断層を挟む上下盤で,地表近傍物質中の宇宙線生成核種濃度に有意な差異がない(すなわち断層の上下変位検出されない)例や,断層からの距離に従って宇宙線生成核種の濃度が変化する例を,データとして得ることができた.また,ボーリングコアにおける宇宙線生成核種の濃度が,深度に対して系統的に変化している例を発見し,隆起山地前縁の堆積物にその山塊の削剥史が記録されていることを見出した.さらに,断層変位に伴う侵食基準面の低下に対する応答の帰結として地形と削剥速度が経時的に変化する過程をモデル化し,それに基づいて地域的なテクトニクスを復元する方法論を構築することができた.いずれのアプローチも,既存の知識や方法論を独自の発想で合体させたものといえるが,その組み合わせにより開拓された手法はこれまでにない革新的なものとなった.これにより任意断層の活動度について,従来の定性的な階級区分から脱却し,定量的評価を展開するための足掛かりが整った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画よりも踏み込んで,宇宙線生成核種の濃度からテクトニクスの復元までを可能にする方法論を着想したうえ,大深度地質ボーリングコアを利用してそれに関する分析を実行し,予想通りの明瞭な結果を得ることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,引き続き西南日本の内帯および外帯,中部・東北日本および北海道に位置する活断層および非活動性断層の周辺において地形・地質の調査および試料の採取を行う.得られた試料は,これまで同様に京都大学,東京大学,筑波大学の実験室で物理化学処理を施し,東京大学および筑波大学での加速器質量分析によって宇宙線生成核種を測定する.付随する分析に関して,試料中の含有微量元素を定量するために使用していた原子吸光分析装置が故障したため,機器更新を行う.また地形の受食性を規定すると考えられる岩盤の強度の定量的評価についても,簡便な測定装置の調達や開発により対応できるようにする.空間情報解析を援用した地形の発達過程およびテクトニクスの復元については,河道および斜面上の遷急点の遡上や斜面崩壊頻度の変化などを組み込んだ3次元的なシミュレーションが可能になるよう,モデル開発を進める.得られた成果は,順次,学会発表や論文出版により公表する.
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