2018 Fiscal Year Annual Research Report
超高齢・多死社会への新しいケア・アプローチ:地域包括ケアにおけるFBOの役割
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18H05317
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
小川 有閑 大正大学, 地域構想研究所, 研究員 (20751829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 毅 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10463845)
林田 康順 大正大学, 仏教学部, 教授 (50384681)
宇良 千秋 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60415495)
新名 正弥 公益財団法人未来工学研究所, 研究センター, 研究員 (70312288)
高瀬 顕功 大正大学, 地域構想研究所, 助教 (90751850)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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Keywords | 地域包括ケア / スピリチュアルケア / 高齢者ケア / 介護者支援 / 月参り / 宗教の社会貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の研究を進めた。 ①国内外の寺院・仏教者を中心に組織化されている福祉資源の事例を視察・調査し、協働に資する組織・制度要件を検討した。国内では、北陸地方での僧侶による高齢者福祉活動の視察調査を行なった。また、国外では、台湾での臨床宗教仏教師の制度について視察調査を行った。台湾では、「善終」という理想的な死の概念があり、善終のためのケアが宗教者に求められている。そのために、医療界と仏教界が協力をして、臨床宗教仏教師育成プログラムを作成し、専門の教育・訓練を受けた宗教者が育成されている。医療者、宗教者双方に聞き取り調査を行ない、台湾の精神風土に根差したスピリチュアルケアの構築(スピリチュアルケアの本土化)の背景・動機、その過程や将来像について知見を得た。国内の事例とともに、地域に根差した精神風土に適した医療・高齢者ケアの重要性を明らかにできたと言える。 ②寺院での介護者カフェを推進する浄土宗総合研究所の「超高齢社会における浄土宗寺院の可能性」プロジェクトについて、カフェの立ち上げや実施状況の記録や聞き取り調査を行なった。東京都葛飾区、宮城県塩竈市、静岡県富士宮市等で開かれた寺院での介護者カフェに参加、さらに地域の社会福祉協議会への聞き取りなども実施した。 ③西日本を中心に広く行われている月参りの風習に着目し、僧侶への聞き取り調査を行なった。僧侶が訪問する檀信徒宅の多くは、独居高齢者もしくは夫婦のみの高齢者であり、多世帯同居でも交流する家族は高齢者という結果であった。また、定期的な訪問の中で、高齢者の異変に気付くことや高齢者の話し相手としての役割を僧侶が感じることが多々あり、月参りが高齢者の見守り機能を有していることが明らかとなった。 ④浄土宗の全国の組長に月参り、中陰参りの実施状況についてのアンケート調査を行ない、全国の実施状況を地図化し、可視化を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
半年という限られた期間のなかで、特に月参りの全国調査を完了できたことは、大きな進展であった。浄土宗だけでも全国に7,000ヶ寺近くあり、全寺院への郵送調査はコスト的にも困難であったため、地域ごとに寺院を取りまとめている組長316人に発送し、154通の返信を得ることができた。その結果を地図データに落とし込み、月参り・中陰参りという可視化されてこなかった宗教習慣を可視化できたことは、大きな成果と言える。 また、台湾調査では、台湾大学医学部付属病院や大悲学苑、蓮花基金会など、宗教者による終末期ケアの重要拠点を訪問し、最前線に立つ実践家に聞き取り調査をできたこと、また、2019年4月初旬に東京都健康長寿医療センターにて、医学界の研究者にむけて、調査報告会を開催する予定であり、台湾調査を契機として、宗教界のみならず、医学界においても、研究への理解者・協力者を得ることが予測され、今後に向けて、大きな成果と考えられる。 一方、予定していた高齢者施設でのケア従事者に向けてのアンケート調査には着手できておらず、2019年度の課題としたい。 月参りの実施状況の可視化、台湾調査での成果は想定以上であったが、アンケート調査の進捗状況も鑑みて、(2)の区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究成果を踏まえて、以下の研究を進める予定である。 ①2018年度は浄土宗寺院における月参りの実施状況をアンケート調査によって明らかにしたので、2019年度は各宗派で行われている宗勢調査から月参りの実施状況を収集し、地図データに落とし込み、宗派を超えた地域ごとの月参りの実施状況を可視化する。また、その成果については論文化する予定である。 ②浄土宗総合研究所の「超高齢社会における浄土宗寺院の可能性」プロジェクトが進める「寺院を会場とした介護者カフェ」について、現地調査を進める。2019年度は、宮城、北海道、山形、鹿児島、静岡でもカフェが立ち上がる予定であり、立ち上げ過程の記録、プログラムや参加者の状態について現地調査を行う。また、参加者や主催者へのアンケート調査によって、その効果を測定する予定であり、調査票の推敲を一年かけて行う。 ③高齢者施設に従事するケアスタッフに対して、仏教者との協働可能性についてアンケート調査を実施する。2020年2月に実施する予定であり、それまでは、調査対象地域の従事者との関係構築に努めつつ、調査票の推敲のため研究会を定期的に開催する。 ④2019年度は国内外のグッドプラクティスの事例収集として、国外は北米(アメリカ・カナダ)、欧州(フィンランド、ドイツ、イタリア)の視察を予定している。国内は来年度の施設への介入調査を念頭におき、調査先を選定する。 ⑤本研究の先行研究に位置づけられる挑戦的萌芽研究「多死社会における仏教者の社会的責任」(2015年度~2017年度、15K12814)において、高齢者福祉施設従事者に対してインタビュー調査を実施している。その結果についての論文執筆を本年度内に行う予定である。
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Research Products
(19 results)