2020 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンディラックフェルミオンのプラズモン異常不安定性とそのテラヘルツ機能応用
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20K20349
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
尾辻 泰一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40315172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩月 勝美 東北大学, 電気通信研究機構, 特任教授 (00590522)
佐藤 昭 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (70510410)
渡辺 隆之 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (80771807)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | グラフェン / プラズモン / 不安定性 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画第3年次にあたり、以下の成果を得た。 1. 非対称二重回折格子ゲート型グラフェントランジスタを,独自に開発したエピタキシャルグラフェン製膜,グラフェン・窒化ホウ素剥離転写,グラフェンチャネルゲートスタック等のプロセス技術を駆使して素子の試作を完了した[前年度からの継続課題,担当:尾辻泰一,渡辺隆之(研究分担者),吹留博一(研究協力者)]. 2. 入射テラヘルツ波に対する増幅作用の観測は、独自開発のテラヘルツ時間分解分光装置を用いて実施した。その結果、テラヘルツ光子とグラフェン電子が直接相互作用して得られる量子効率限界の2.3%を4倍以上も上回る最大9%の増幅利得の実証に成功した。プラズモン不安定性の発現機構を同定するために、バイアス依存の電子ドリフト速度とプラズモン速度を抽出した結果、常にプラズモン速度がドリフト速度を上回り、プラズモニックブーム不安定性は発現していないことが明確になった。[前年度からの継続課題,担当:尾辻泰一,渡辺隆之(研究分担者)]. 3. デバイスモデリングは,巨大増幅をもたらすプラズモン不安定性機構を解明するために、グラフェンディラックプラズモンの挙動を電磁流体方程式とポアッソン方程式を連立して解析した。その結果、ドリフト速度がプラズモン速度を超越した場合にのみ増幅作用をもたらすとされた従来理論を覆し、ドリフト速度がプラズモン速度の1/√3以上であれば増幅利得が得られることを見出し、実験結果を裏付けることができた。電子走行速度変調型プラズモン不安定性に起因するものであることが初めて明らかとなった[前年度からの継続発展課題,担当:尾辻泰一,佐藤昭(研究分担者)]. 4.第二の目的の計画遂行のための,調査研究・実験系構築を進めた[前年度からの継続課題,担当:尾辻泰一,岩月勝美(研究分担者)].
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由 ・プラズモン異常不安定性の発現の根拠となるドリフト速度がプラズマ速度を超越する条件が実動作条件下で得られるか否かという本研究課題の核心に迫る実験を遂行し,これまで明確には認識されていなかったキャリア運動量緩和時間のより精密な周波数分散(損失媒質時におけるレッドシフトと利得媒質時におけるブルーシフト)効果を発見した.室温下で9%という(グラフェン単層からの)巨大利得を獲得できたことは驚きに値し,得られたテラヘルツ帯巨大利得増幅現象並びに分散効果を同時に説明し得る理論モデルは存在しなかった。この難題に果敢に挑み,新たな物理モデルを構築してテラヘルツ帯複素光学導電率の挙動を詳細に検討した結果,プラズモンで変調された光学導電率の実部と虚部の位相関係が一定条件を満たすときに巨大利得増強作用が得られること,その実現には電子ドリフト速度がプラズモン速度を超越するチェレンコフ条件を必要とせず、電子速度変調型プラズモン不安定性に起因する新たな物理が内在することを発見した. ・本成果は,プラズモン不安定性発現機構の制御性を明らかにし,テラヘルツ帯コヒーレント発振源としての能力を定量的に明らかにしてゆくための礎となるとともに,かかる新たな物理現象をデバイスの設計論として工学的に実装することを可能にするものであり,学術的に極めて有益な知見である.
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Strategy for Future Research Activity |
1. 非対称二重回折格子ゲート型グラフェントランジスタを研究代表者らが独自に開発してきたエピタキシャルグラフェン製膜,グラフェン・窒化ホウ素剥離転写,グラフェンチャネルゲートスタック等のプロセス技術を駆使し,素子の設計・試作を実施する[前年度からの継続課題,担当:尾辻泰一,渡辺隆之(研究分担者),吹留博一(研究協力者)]. 2. デバイスモデリングは,グラフェン電子正孔のクーロン相互作用に伴う多体効果をキャリア自己エネルギーとして記述し,ランダム位相近似およびGWA法により線形バンド分散の崩れ(ブロードニングと非線形性)を伴うグラフェンプラズモンを2.5次元に次元拡張して定式化し,ポアッソン方程式と連立して自己無撞着に数値解析する[前年度からの継続発展課題,担当:尾辻泰一,佐藤昭(研究分担者)]. 3. テラヘルツ帯の自励発振現象は研究代表者所有のフーリエ変換遠赤外分光計測装置を,増幅現象は,研究代表者所有のテラヘルツ時間分解分光計測装置を用いてそれぞれ測定・評価する[前年度からの継続課題,担当:尾辻泰一,渡辺隆之(研究分担者)]. 4. 実動作状態下におけるナノ領域のプラズモンダイナミクスの観測は,放射光施設Spring-8を利用したオペランド時間分解顕微分光計測装置[T. Someya, H. Fukidome et al., Phys. Rev. B 95, 165303 (2017)]を利用する[前年度からの継続課題,担当:尾辻泰一,吹留博一(研究協力者)]. 5. グラフェンプラズモン異常不安定性を新原理として導入したテラヘルツ増幅素子および光・テラヘルツ波周波数変換・増幅素子を設計試作評価し,従来技術に対する量子効率改善効果を定量的に明らかにする[担当:尾辻泰一,岩月勝美(研究分担者)].
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、研究成果の公表として予定していた国内・海外の学会参加・講演目的の出張がすべてキャンセルとなった。加えて、研究協力者として共同実験実施のためにロシア、米国の研究者を招聘する予定がすべてキャンセルとなった。以上より旅費として計上していた支出がゼロとなったため。 次年度にこれらの学会参加、研究者招聘を計画して適切に予算執行する。
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[Presentation] グラフェン/h-BNファンデルワールス積層構造ナノキャパシタの 転写スタック法によるプロセス開発と結晶品質評価2020
Author(s)
菅原大樹, 諏訪健斗, 吹留博一, Juan Antonio Delgado-Notario, 佐藤昭, 尾辻泰一
Organizer
第81回応用物理学会秋季学術講演会, 9a-Z29-11, 同志社大今出川校地, 京都, Online, Sept. 9, 2020.
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