2020 Fiscal Year Research-status Report
アルカリ金属によるチタンの還元反応メカニズムの解明と新プロセスのための学術指針
Project/Area Number |
20K20356
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇田 哲也 京都大学, 工学研究科, 教授 (80312651)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チタン製造プロセス / クロール法 / ハンター法 / 溶融塩 / 金属熱還元法 / X線透過観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
チタンは耐食性、比強度にすぐれ、資源面でも大きな問題もなく、今後の普及が期待される金属である。本研究では、還元メカニズムの解明を通じて、新しい金属チタンの還元法の提案を試みた。特に、過去に粉状のチタンが生成することが報告されているナトリウム還元法について研究を行ってきた。結果、前年度までに、X線透過装置を用いて、四塩化チタン(TiCl4)のナトリウム還元の場合と、過去の報告で同様の手法で行ったTiCl4のマグネシウム還元の場合の比較を行った。結果、ナトリウム還元では、マグネシウム還元とは異なり、反応生成物である塩化ナトリウム(NaCl)が反応界面にほとんどとどまらず、すみやかに、反応容器下部に離脱することがわかった。 前年度までに考察したように、反応界面からの反応副生成物の離脱速度はその密度差だけが問題であれば、還元剤よりも反応副生成物の密度を大きくできれば離脱速度を向上できるはずである。そこで、本年度は、四ヨウ化チタン(TiI4)のマグネシウム還元を行うことにより、TiCl4のナトリウム還元と同様な結果を得ることができるのではないかと考え実験を行った。結果として、TiCl4のマグネシウム還元で見られるような反応界面における塩のプールは確認できなかったが、MgI2は部分的に生成チタンと下部から這い上がったMgの混在する領域に分散する形でとどまることも新しく判明した。このことは、密度差は重要であるものの、単に密度だけで考察を行うことは困難であることを示唆しており、令和3年度に、還元剤、溶融塩、反応容器、チタンの4者間の濡れの様子ならびに、還元剤と塩の入れ替わりの様子を詳細に観察したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、TiCl4のNa還元反応のX線透過観察実験やTiI4のMg還元さらには、過去の報告との比較を通じて研究は順調に推移している。 例えば、本年度は、反応生成物である塩化物の反応界面からの離脱速度の差は還元剤と副生物である塩化物の比重差に影響されているのではないかと単に考え、TiI4のMg還元の実験を行った。すなわち、MgとMgCl2の密度は、800℃でそれぞれ、1.55と、1.66 g /ccであり、その差はわずかであるがNaとNaClの密度は、900℃で、0.76 と、1.55 g /ccであり、その差は大きい。また、MgとMgI2の密度は、800℃で1.55 と、2.94 g /ccであり、同じMg還元でも密度差が大きく、Na還元と同様に、MgI2の反応界面からの速やかな離脱を予想した。その結果、TiCl4のMg還元のような反応界面における大きな液溜りの形成は確認できず、大局的な意味では予想通りであった。一方で、MgI2の一部は、生成したチタンと還元剤であるMgと混在する形で分散して反応界面付近に残留した。MgI2がこのように分散して残留することは、形に差があるが別の報告でTiCl4のCa還元でも見られている。 また、ヨウ化物のMg還元実験で、Mgの仕込み初期界面よりも上部での反応容器壁での反応の進行の様子もTiCl4のMg還元と大きく様子が異なり、ヨウ化物のMg還元では容器壁でのチタンの成長はほとんど見られなかった。これは、TiCl4のCa還元でも同様である。これは、塩のプールができず、反応容器中央での反応が速かったのが原因か、それとも反応容器壁で塩が濡れたまま残存し反応容器壁での反応を阻害したか、両方の見解を立てることができる。 今後、これら、種々の還元反応の統一的な理解を塩、還元剤、反応容器、チタンの4者間の濡れの様子の観察から突き詰めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の実験で、 ステンレス製反応容器/還元剤/塩化物の3相界面において、ステンレス製の反応容器に対して、Mg還元では、MgCl2よりもMgの方が濡れるのに対し、Na還元では、NaClの方がNaよりも濡れることがわかっている。実際、Naを仕込んだ容器に溶融NaClを上部から滴下すると、NaClが反応容器壁を伝って反応容器下部に流れる様子も確認できた。このように濡れ性は反応を理解する上で大きな要素であり、令和3年度の中心的課題として取り組む。また、単に濡れ性を評価するだけでなく、塩と還元剤の入れ替わりも観測し、反応で生成した塩がどのように下部の還元剤を露出させるのか観察したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において旅費が不要となったことが大きい、次年度に実験消耗品として有意義に活用したい。
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