2018 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学反応と高温熱化学平衡を利用して充放電する「カーボン空気二次電池」の提案
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18H05349
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊原 学 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90270884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 馨 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50644944)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 工学 / 総合工学 / エネルギー学 / エネルギー生成・変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「カーボン空気二次電池」という新しい概念の実現性や優位性を、固体酸化物型電気化学デバイス、二次電池双方のアプローチから検討し、さらにシステム全体を設計しその実現性、優位性を検討する。 2018年度は固体酸化物型セルでのCO2電解による炭素生成と、DCFCの可逆動作の電気化学的検討を行った。 本提案の基本概念の成立に必要なのは、1. 一定量以上の炭素析出が継続して起こること、2. 充電/放電反応が可逆的に起こること、である。特に、発電反応はRDCFCと同じであるので、充電時の炭素析出反応の進行が鍵となる。SOFCでは、高温動作であるため、CO燃料による発電も知られている。「カーボン空気二次電池」では、その逆反応であるCO2 + 2e- → CO+ O2-を低過電圧で進行させ、引き続きおこると期待される2CO←→ CO2+C ( Boudouard平衡反応)による炭素析出反応によってエネルギーは炭素として蓄エネルギーされる。また、析出時に発電時に有利なNi表面上、特に三相界面のNi上への炭素析出がおこると発電時の出力密度は向上する。 そのための電極材料の検討、及びCO2電解、DCFC両反応の電極反応機構解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案において、放電時の反応はDCFCとしてすでに検討されているため、特に充電時の反応機構に対して重点的に考察した。充電では電気化学反応と熱化学反応を組合わせた炭素析出方法として、優先的に生じる電気化学反応:CO2+2e-→CO+O2-によりCO分圧をBoudourd平衡分圧より大きくすることで平衡を傾けてBoudouard反応:2CO→C+CO2により炭素を析出させることを考えている。よって電気化学的及び熱化学的双方の手法をもとに解析し、充電時の炭素生成反応について考察した。 カレントインタラプション法により、充放電開始から2分毎にオーム抵抗損失と反応過電圧を分離した。参照極間電位を使用してネルンストの式を用いて燃料極側の酸素分圧を計算した。また高温であるため電極上においてCO+1/2O2⇄CO2が平衡に達していると考えられることを利用し、その平衡定数を使用して充電時のCO/CO2分圧比の経時変化を計算した。 その結果、30分間充電を行った場合、端子電圧が2段階で変化した。また、端子間電位が2.0 V~2.5 Vに達するとほとんど一定の値となり安定した。この際、端子電圧が大きく増大したと同時に、燃料極過電圧が増大し、燃料極側のオーム抵抗損失が低減した。また充電開始後からCO分圧が増大し、端子間電位が2.0 V~2.5 VにてCO分圧が急激に減少し、一定となる傾向があった。充電時にCO2とCOの電解反応およびBoudouard平衡反応が組み合わさり、CO2が段階的に還元されたことで燃料極過電圧が変化したと考えられる。また燃料極過電圧の急激な増大は燃料極への炭素析出に起因したと考えられる。よって提案した電気化学反応と熱化学反応を組合わせた炭素析出方法が実現できることが実証できた。
以上のことから、設定した課題に対して、「おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討を通じて、本システムにおいては電極三相界面上への炭素の析出による電気化学反応速度の低下を抑制し、三相界面以外の箇所への炭素析出を促進するといった、炭素析出を選択的に制御することが主課題の一つとなることが示唆された。よって、2019年度はその選択的な炭素析出の制御に関して、電極材料及びシステム両面で検討を行う。 電極としては、本研究室でのDCFCやドライメタン発電に関する研究においてプロトン伝導性酸化物の添加が、電極上の炭素析出に有効であることが示唆されている。本研究のCO2電解における炭素析出とは厳密には異なるが、炭素析出に電極添加物が影響するメカニズムの考察と合わせて検討を行う。研究代表者らが提案した、酸素活量を軸とした三相界面上の反応モデルを用いることにより、電極表面、界面の状態と反応の関係性を定量的に議論できると考えている。同時に、電極(金属及び酸化物)や電解質材料に関しても、電解に関する文献調査を踏まえて複数の組み合わせを検討する。 システムとしては、電極外に炭素を析出しやすくすることによる解決方法を複数検討する。電極外に炭素を析出させるには平衡論的、速度論的な両面でのアプローチが考えられる。平衡論的には、Boudouard平衡の温度依存性を用い、温度差によって炭素の析出しやすさを変化させることが考えられる。速度論的には、電極外に金属微粒子などの炭素析出場をあたえることによって選択的な炭素析出が可能になると考えられる。 さらに、現在のコインセル型に加えて、チューブ型セルでの評価法を構築することで、 電極内外での反応をより定量的かつ実用に近い形で検討する。並行して、本提案がシステム全体として他の蓄電デバイス、システムに対してどういった優位性があるかの議論も行う。
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