2019 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental Verification of Three-dimensional Aromaticity
Project/Area Number |
18H05353
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸部 義人 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (60127264)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80362622)
久木 一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90419466)
|
Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
Keywords | 芳香族性 / 反芳香族性 / 三次元積層構造 / 分子構造 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
28パイ系の反芳香族化合物であるテトラシクロペンタテトラフェニレン(以下TCPTPと略記)をかさ高い置換基で立体保護した誘導体として、すでに(トリイソプロピル)シリル(TIPS)基をもつ誘導体については、単結晶構造解析により3層構造をとることを見出し、固体プロトンNMRの測定を行った。本年度は主として、TIPS以外の置換基をもつTCPTP誘導体の合成のためのTCPTP骨格合成と置換基の合成、異なる分子骨格をもつ反芳香族分子に関する研究、および理論研究グループとの議論を深めることで理論面の進展を図った。 TCPTP骨格の合成は多段階かつ低収率の段階を含む経路で合成してきた。合成効率の向上を目指していくつかの改良を試み、収率を向上することができたが総段階数を減らすには至らなかったので、現行の多段階の経路で合成を進めることにより中間体を蓄積した。文献記載の方法に従いTIPS基以外のケイ素置換アセチレンの合成も行った。 さらに、本研究者がこれまでに合成してきた弱い反芳香族性を示す分子として三角形のデヒドロベンゾ[12]アヌレン(12DBA)をとりあげ、その固体表面上での分子集合について操作トンネル顕微鏡(STM)を用いて観測した。その結果、銀(111)表面上で生じる基板との配置と分子間の配置の両方から生じるキラリティに起因して表面上では極めて珍しいメソ型の集合体を形成することを見出した。また、12DBAの系について、溶液中での会合挙動や会合による安定化のエネルギーを実験と理論の両方から調査し、それが非常に小さいことを明らかにした。 理論研究に関して研究協力者との議論を重ね、2分子会合体と3分子会合体との相違や会合体中の分子の相対配置(ねじれ)が芳香族性に及ぼす効果について量子科学計算を行うこととし、予備的な知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TCPTP骨格の新合成法の可能性をいくつかの予備的な実験を行うことにより探索した。しかし、現状の合成経路を置き換えるほどの有力な方法を見出すには至らなかった。そのため、現状経路の収率向上を目指し、副生成物の構造分析に基づいて問題点を明らかにすることにより、収率と操作性を向上させることができた。その手順に従ってTCPTP骨格の合成を進めている。画期的合成法の確立には至らなかったが、従来法の問題点の解明しそれを改良できたので総合的には研究の進捗に寄与している。 12DBAの系に関しては、固体表面上での多層形成にまでは至っていないが、STM観測によりその基礎となる基盤との相対配置に関して重要な知見を得た。これは多層構造の配置を調べるうえで必要不可欠な知見であり、着実に進展しているといえる。 理論研究に関しては、実験結果に基づいて、多層構造の層の数に依存した芳香族的性質の交互性という新たな視点を着想することができたので、今後の発展が期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
TCPTP骨格の合成の検討を行ったが、従来経路の改良法がもっとも確実であることがわかったので、研究の遂行に十分な量の中間体を合成するには時間を要するが着実に追加合成を行う。 12DBAの系に関しては、適当な置換基をもつ誘導体が有機溶媒とグラファイトの界面において形成する超分子集合体とその多層形成に関してSTM観測を行い、よく知られた芳香族化合物の多層構造に行ける分子の相対配置と12DBAの場合との相違の有無を調査し、反芳香族の特異性を明らかにする。 理論研究に関しては、2分子会合体と3分子会合体との相違が芳香族性に及ぼす効果が明らかになれば、さらに大きな会合体に関しても計算を行い、芳香族的性質の発現に交互性があるかどうかを確かめる。交互性が明らかになれば、本研究の動機となっている三次元芳香族性に関する理論的提唱をより拡張した概念に発展させることができるだろう。
|
Research Products
(8 results)