2020 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental Verification of Three-Dimensional Aromaticity
Project/Area Number |
20K20366
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戸部 義人 大阪大学, 産業科学研究所, 招へい教授 (60127264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家 裕隆 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80362622)
久木 一朗 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (90419466)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 芳香族性 / 反芳香族性 / 三次元積層構造 / 電子状態 / 分子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
28パイ系反芳香族分子のテトラシクロペンタテトラフェニレン(TCPTP)の(トリイソプロピル)シリル(TIPS)誘導体の2層構造における三次元芳香族性を検討するため、2層に積層した結晶成長を試みた。X線結晶構造解析から2層構造の形成を確認できたが、結晶成長の再現性が乏しいため固体プロトンNMRの測定に十分な量をえるには至らなかった。TIPS以外の置換基をもつ誘導体の合成を行うための合成ルートの検討も重ねた。その過程で予想外の困難に遭遇したが、用いる薬品の純度が反応結果に大きな影響を及ぼすことを突き止め、合成法を改善に結びつけた。 TCPTPの2電子還元により生成するジアニオンでは、外周が22パイ電子系の芳香族に内周が8パイ電子系の反芳香族になることを、理論計算とNMRスペクトルに基づいて解明した。ジアニオンのカリウム塩は、2個のカリウムを挟んでTCPTP環が重なったサンドイッチ構造をもつことをX線解析から明らかにしたが、層間の距離が大きいため三次元芳香族性は観測されなかった。 一方、より単純なモデルを用いた理論研究では、積層した反芳香族分子の層の数に依存して芳香族的性質に交互性が現れる可能性が示唆された。2層および3層の配置をとる結晶状態における性質の実験的検証と対応させることができれば、三次元芳香族性の提唱をさらに拡張、発展でき、概念をより一般化できる重要な成果と言える。 弱い反芳香族性を示す12パイ系のトリベンゾデヒドロ[12]アヌレン(12DBA)が固体表面で形成する積層構造の配置に関して走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて観測し、12DBAが芳香族とは異なる捻じれた配置で積層することを見出した。しかし、多くの分子間の相互作用があるため、その原因が三次元芳香族性に基づくかどうかは断言できない。
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