2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H05355
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石谷 治 東京工業大学, 理学院, 教授 (50272282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉置 悠祐 東京工業大学, 理学院, 助教 (10752389)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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Keywords | 光反応化学 / レドックス光増感錯体 / S-T吸収 / 光触媒反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルテニウム(II)錯体の配位子を様々に変えて光物性を詳細に検討した結果、二つの三座配位子を有するルテニウム(II)錯体がCO2還元を駆動する光増感錯体として機能することを見出した。この光増感錯体の吸収スペクトルにおいて長波長可視領域に弱い吸収帯が観測された。詳細な分光測定および計算科学的手法により、この吸収帯はS-T遷移性を含むことが分かった。これは、最も広く用いられている光増感錯体である[Ru(N^N)3]2+ (N^N =ジイミン配位子) など、他のルテニウム(II)錯体では見られない特異な性質である。この錯体の長波長吸収をレニウム(I)触媒と犠牲還元剤の共存下、赤色光( > 620 nm) で励起するとでCO2を光触媒的に還元することに成功した。 三座配位子の電子的・立体的特性を系統的に変えることで、ルテニウム(II)錯体の分子軌道および立体的配位構造を変調させ、それによってS-T吸収の波長領域およびモル吸光係数がどのように変化するかを詳細に解析した。s供与性の強い三座配位子であるbis(N-methylbenzimidazolyl)pyridineと2,2′:6′,2′′-terpyridineを共に有するとき、ルテニウム(II)錯体が特異的にS-T吸収を示すことが分かった。また2,2′:6′,2′′-terpyridineに電子求引性の置換基を導入すると、このS-T吸収はより長波長シフトした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ルテニウム(II)錯体の配位子を様々に変えて光物性を詳細に検討した結果、S-T吸収をより長波長側に発現するための方法を見出した。すなわち、s供与性の強いbis(N-methylbenzimidazolyl)pyridineと、電子求引性の置換基を導入した2,2′:6′,2′′-terpyridineを共に有するルテニウム(II)錯体が優れた長波長可視光の吸収を示した。また吸収スペクトルが長波長シフトすると、多くの場合エネルギーギャップ則のため励起寿命が短くなってしまうが、本研究で検討している一連のルテニウム(II)錯体では逆に励起寿命が長くなった。これはレドックス光増感錯体として有利な物性変調であり、重要な研究の進展だと考えている。これらの研究により、720nmまでの長波長吸収と327 nsの比較的長い励起寿命を両立するルテニウム(II)光増感錯体の開発に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
S-T吸収はスピン反転を伴う禁制遷移であり、ほとんどの光増感錯体では観測されない。我々は、二つの三座配位子を有するルテニウム(II)錯体がCO2還元を駆動する光増感錯体として機能することを見出した。昨年度は計算化学的手法を活用し光吸収に関わる軌道の特性とS-T吸収発現の関係を明らかにすることで、長波長可視部に強いS-T吸収を有するルテニウム(II)錯体の分子設計を行った。今年度は三座配位子を有するルテニウム(II)錯体の構造とS-T吸収強度の相関に関する情報を活用し、三座配位子の工夫により、より強いS-T吸収を示すルテニウム錯体の開発を行い、それに加えてオスミウム(II)錯体においても、より長波長領域により強いS-T吸収を発現させることを目指す。
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Research Products
(5 results)