2019 Fiscal Year Annual Research Report
金属元素ターゲッティング:病原性原虫の増殖抑制効果の発揮と作用機序解析
Project/Area Number |
18H05358
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
和田 章 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 専任研究員 (90443051)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 感染症 / 感染性原虫 / 金属元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、病原性原虫により発症する「顧みられない熱帯病」への早期対策が切望されている。そして、世界規模で感染が拡大しつつあるマラリア感染症に対する新たな治療薬の創出は喫緊の課題となっている。そこで、本研究では、病原性原虫の生命活動を制御する金属親和性化合物を見出すと共に、それら化合物により病原性原虫の増殖を特異的に抑制する“金属元素ターゲッティング”の新手法を開拓する。また、その金属元素ターゲッティングに基づく創薬戦略の有用性などを検証することも目的としている。そして、これまでの取り組みにより、薬剤感受性及び薬剤耐性マラリア原虫に対して増殖抑制効果を発揮すると共に、ヒト細胞に対して低毒性を示す金属親和性化合物を新たに見出してきた。そこで、当該年度では、それら化合物の基本特性を保持しながら、立体構造及び静電的性質の多様性を付与した各種誘導体を設計・合成・収集した。続いて、それら誘導体に対して、赤血球に感染した各種マラリア原虫の増殖度を指標とする抗マラリア活性の評価、様々なヒト細胞に対する細胞毒性の評価を実施した。その結果、ヒト細胞に対する低い毒性は維持しつつ、オリジナル化合物に比べて抗マラリア活性が向上した誘導体を複数見出すに至った。さらに、より高度な抗マラリア活性を発現した誘導体を選定し、それら誘導体の分子組成に依存した立体構造・電子特性及び抗マラリア活性の相関関係の解明に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、前年度に見出した抗マラリア活性を発揮する金属親和性化合物の基本骨格を母格とし、立体構造及び静電的性質を改変した各種誘導体を設計・合成・収集した。そして、それら誘導体の抗マラリア活性及びヒト細胞毒性を評価した。その結果、各種ヒト細胞に対する低毒性を維持しながら、オリジナル化合物と比較して抗マラリア活性が向上した複数の誘導体を見出すに至った。さらに、マラリア原虫に対して顕著な増殖抑制効果を発揮する高活性体を選定し、それらの分子組成に依存した立体構造・電子特性及び抗マラリア活性の相関関係の解明に従事した。それゆえ、本研究課題は、おおむね計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展開としては、オリジナル化合物に比べて高い抗マラリア活性と低い細胞毒性を有する金属親和性化合物に焦点を絞り、それら化合物がマラリア原虫内で標的とする金属元素を同定する。そして、マラリア原虫が必要とする金属元素を制御することで、それら原虫の増殖活動を特異的に抑制する作用機序を明らかにする計画である。さらに、マラリア原虫感染症の動物モデルへの化合物投与による延命・治癒効果の評価を視野に入れて取り組む。また、本研究課題で得られた成果は、国内外のシンポジウムや学会などでの発表を見据え、特許化及び論文化に取り組む方策である。
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Research Products
(1 results)