2020 Fiscal Year Research-status Report
金属元素ターゲッティング:病原性原虫の増殖抑制効果の発揮と作用機序解析
Project/Area Number |
20K20369
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
和田 章 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 専任研究員 (90443051)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 感染症 / 病原性原虫 / 金属元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の多剤耐性原虫の出現によるマラリア感染症の蔓延を阻止するためには、既存のマラリア治療薬の標的及び作用機序とは明確に区別される新たな治療薬の創出が肝要である。それと同時に、熱帯地域における病原性原虫に起因する様々な感染症を対象とした新薬創成にも期待が寄せられている。そこで、本研究課題では、マラリア原虫に代表される病原性原虫の生命活動に関与する金属元素の役割を理解すると同時に、金属親和性化合物により病原性原虫の増殖機能を抑制する「金属元素ターゲッティング」の新手法を開拓する。そして、金属元素ターゲッティングを基盤とした新薬開発の可能性・潜在性などについて検証する。そこで、当該年度では、昨年度に引き続き、薬剤感受性及び薬剤耐性マラリア原虫の双方に対して増殖抑制効果を発現した金属親和性化合物に焦点を絞り、立体的構造及び静電的性質を多様化した各種誘導体を設計・合成した。その結果、オリジナル化合物よりも低濃度で抗マラリア活性を発揮する新たな誘導体の創出に成功した。さらに、それら誘導体がマラリア原虫内において結合する標的金属元素を同定するだけでなく、標的金属元素の捕捉及び不活化により特異的に誘導される増殖抑制効果の分子メカニズムの解明へと展開した。そして現在、マラリア治療薬候補の創出を視野に入れ、マラリア原虫感染症の動物モデルを利用した金属親和性化合物の薬効検証などを目指して取り組んでいる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、昨年度に引き続き、薬剤感受性及び薬剤耐性マラリア原虫の双方に対して増殖阻害活性を発揮した金属親和性化合物に焦点を絞り、立体的構造及び静電的特性を改変した各種誘導体を設計・合成した。その結果、母格構造を有する化合物よりも低濃度で抗マラリア活性を発現する新規誘導体を創出した。さらに、それら誘導体がマラリア原虫内において標的とする金属元素を特定するだけでなく、標的金属元素の特異的な捕捉により誘導される増殖抑制効果の一端を解明した。そして、本研究課題は、新型ウイルス感染防止に対応するため、研究計画の一部を見直して取り組んだものの、おおむね計画通りに進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の展開としては、マラリア原虫内において、金属親和性化合物が標的とする金属元素の生理的役割を理解すると共に、標的金属元素の捕捉及び不活化により誘導される増殖抑制効果の分子メカニズムの全貌を明確化する。そして、新たなマラリア治療薬候補を創出する一環として、マラリア原虫感染症の動物モデルを利用した金属親和性化合物の薬効検証等を目指して取り組み、金属元素ターゲッティングを基盤とする創薬研究の有用性を実証することを計画している。また、本研究課題で得られた研究成果に関しては、特許出願を起点とし、国内外のシンポジウム・学会などでの研究交流、論文等による誌上発表へと繋げる方針である。
|
Causes of Carryover |
新型ウイルス感染防止対策に伴う諸対応により、研究計画の一部を見直して取り組んだことから、次年度使用額が生じた。そこで、本研究課題を次年度に継続し、各種実験の遂行に活用することで研究目的を達成する計画である。
|
Research Products
(3 results)