2018 Fiscal Year Annual Research Report
非レトロRNAウイルス網羅解析技術による新しいRNAウイルス学の創出
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18H05368
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
布浦 拓郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生命理工学研究開発センター, 研究開発センター長代理 (60359164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 善弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 主任技術研究員 (10399561)
浦山 俊一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50736220)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | RNAウイルス / メタゲノム / メタトランスクリプトーム / 多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
分担者・浦山及び研究代表者らは、独自の網羅的RNAウイルス検出技術FLDS法(fragmented and loop primer ligated dsRNA sequencing)を確立し、初めて実用レベルで非顕在感染を含む『不特定の(非レトロ)RNAウイルス』を一挙に検出することを可能にした(Urayama et al. 2016 & 2018)。本手法は、RNAウイルス感染の指標とし知られている”dsRNA” (dsRNAウイルスのゲノム・ssRNAウイルスの複製中間体)を高純度に精製・断片化し、末端からの逆転写により得た完全長cDNAを次世代シーケンサーで解読するものであり、既存のシーケンスに基づくRNAウイルス検出法よりも、遙かに網羅性や効率で上回る。本研究では、RNAウイルスゲノムの網羅的検出法の多様な試料への最適化、病原ウイルスの自然環境での動態解明、環境ウイルスゲノムを使った新しい生物制御技術の開発に挑む。 本研究初年度である平成30年度においては、これまで真菌、海洋環境微生物群集や昆虫組織に留まっていた適用範囲を、研究協力者らと連携し、植物組織、動物組織、糞便試料、海洋性プランクトン等、できる限り多様な試料へFLDS法を適用し、RNAウイルスゲノム探索を実施した。更に高等動物組織に対し、FLDS法の最適化を試みた。一連の研究の結果、これまでに試験したほぼ全ての試料からRNAウイルス由来のゲノム配列を回収することが出来、また、高等動物に由来する試料についてはdsRNA精製後にrRNAを追加で除去する過程を追加することにより、dsRNA由来配列の回収効率を上げることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に記した通り、平成30年度においては、研究協力者らと連携し、植物組織、動物組織、糞便試料、海洋性プランクトン等の多様な生物試料へFLDS法を適用し、RNAウイルスゲノムの探索を行った。更に、既にシーケンスデータ中のrRNA由来配列の過剰な混入が明らかとなっていた高等動物組織由来の試料に対する適用の最適化を実施した。これまでに試験したほぼ全ての試料からRNAウイルス由来のゲノム配列を回収することが出来、特に糞便試料については、ヒト、野生動物等、由来生物を問わず、試みた全ての試料からRNAウイルス由来の配列の検出に成功した。現在、試行したそれぞれの試料について、研究協力者と共に論文執筆を進めている。また、高等動物に由来する試料についてはdsRNA精製後にrRNAを追加で除去する過程を追加することにより、dsRNA由来配列の回収効率を上げることが出来ることが明らかとなった。高等動物組織についても、試料により検出出来ないことはあるものの、RNAウイルス探索に十分に利用できることが明らかになりつつある。 一方、これまで多様性解析が十分に行われてこなかったRNAウイルスにおいては、公共データベース上のデータが乏しく、独自のデータベース構築が必要である。平成30年度において、既存のデータベースを統合した解析を実施している海外の研究グループとデータ整理、データベース構築において協力関係を結ぶことで合意した。今後、海外のグループとの連携によってデータベース構築を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度においては平成30年度に引き続き、研究協力者の支援を受けつつ、植物組織、動物組織、糞便試料、海洋や陸域由来の環境微生物群集等、できる限りFLDS法の適用対象を拡大し、RNAウイルスゲノム解析を進め、また、海外グループとの連携を通し、当初最終年度の主要課題としてきたRNAウイルスデータベースの構築について前倒しで取り組み、最終年度での完成に繋げる。その他、「機能遺伝子としての未知RNAウイルス配列のリソース化」を開始する。 これまでの研究により、本研究開始当初より、技術的課題が明らかとなっていた高等動物組織に対する解析手法の改善について大凡の道筋をつけることが出来た。本年度は、適用対象を拡大するだけでなく、高等動物に対しては、組織毎の最適化の可能性について検証を進める。また、研究協力者とも協同で、これまでに実施したRNAウイルス(メタ)ゲノム解析から得られたデータの論文執筆、公表を進める。更に次年度においては「機能遺伝子としての未知RNAウイルス配列のリソース化」も開始する。特に次年度は、RNAウイルス遺伝子からの機能スクリーニングシステムのパン酵母をホストとした試験系の構築と、温度、紫外線、飢餓等に対するストレス耐性付与遺伝子の単離を試みる。
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