2020 Fiscal Year Research-status Report
非レトロRNAウイルス網羅解析技術による新しいRNAウイルス学の創出
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20K20377
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
布浦 拓郎 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生命理工学センター), センター長代理 (60359164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 善弘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 主任研究員 (10399561)
浦山 俊一 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50736220)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNAウイルス / dsRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
・RNAウイルスゲノムを網羅的に検出するFLDS法の適用拡大 令和2年度においては研究協力者の支援を受けつつ、本研究グループが開発した二本鎖RNAシーケンス解析手法FLDS法を、動物細胞を中心に、海洋や陸域由来の環境微生物群集等に適用して未知系統群を含むRNAウイルスゲノム解析を実施した。また、FLDS法自体の高感度化にも取り組み、その成果を報告した(Hirai et al. 2021)。一連のRNAウイルス探索の結果、令和2年度においては、2つの藻類と珪藻、地衣類からの新規RNAウイルスを検出した事例について報告した(Urayama et al. 2020, Uehara-Ichiki et al. 2021) 。更に、FLDS法の適用実績がある糸状菌についてもその適用数を大幅に増やした結果、これまで例外なく全てのRNAウイルスが1遺伝子として有すとされてきた複製酵素(RNA依存RNA合成酵素)が、2つに分割されてゲノムのコードされたRNAウイルスを複数例見出した (Chiba et al. 2021、筑波大学プレスリリース) 。その他、動物の培養細胞を用いた試験において、プラス鎖RNAウイルスやマイナス鎖RNAウイルスについても、両末端域を含むウイルスゲノム全長配列が容易に取得できることを示した。 ・データベース構築 国内外の研究協力者との連携にて打合せを進めているが、コロナ禍の影響を受け、進捗に著しい遅れが生じている。 ・機能遺伝子としての未知RNAウイルス配列のリソース化 FLDS法で得たRNAウイルス遺伝子断片(cDNAライブラリーに相当)を、ランダムにパン酵母遺伝子発現用シャトルベクターへ導入したが、十分な効率が得られなかった。そこで、糸状菌とそのシャトルベクターにモデル系を変更し、特定のRNAウイルス遺伝子発現が糸状菌の生育と二次代謝に影響を及ぼすことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ウイルス遺伝子に関する機能解析実験やdsRNA解析によるウイルスゲノム解析手法の適用確認に関する実験・研究はほぼ順調に進んでいる。一方、RNAウイルスゲノム解析から未知ウイルスを検出するに不可欠なデータベース構築については、国内外の研究協力者との共同がコロナ禍の影響を受けて遅延し、遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
・RNAウイルスゲノムを網羅的に検出するFLDS法の適用拡大 動物細胞ではdsRNAがほとんど蓄積しないと言われており、実際、従来のFLDS法プロトコルでは高等動物組織への適用は困難であった。そこで、FLDS法のプロトコルを見直し、10 pg程度のdsRNAからでもシーケンシングを実施可能なFLDS ver. 3を開発した。当該手法の適用により、様々な動物RNAウイルスに対してもFLDS法が有効であることが示され、これまで本当の意味での網羅的な探索がほとんど行われてこなかった動物試料を対象としたRNAウイルス多様性の理解を拡張する準備が整った。 ・機能遺伝子としての未知RNAウイルス配列のリソース化 本課題ではRNAウイルスを機能核酸として利用した、細胞機能制御技術の開発を目指している。令和2年度はその実証のため、パン酵母をモデル系とし、シャトルベクターシステムによりウイルス遺伝子ライブラリーの導入・発現を行った。令和2年度度までにシャトルベクターの構築と既知遺伝子の発現を確認出来たため、令和2年度はライブラリーの導入を試みた。しかし、シャトルベクターへのライブラリー導入効率が悪く、In-fusion法や従来型のクローニング手法等を試したが、効率の向上は認められなかった。そこで、同様のシャトルベクターシステムが利用可能な糸状菌(アスペルギルス属菌)へとモデル系を変更し、ベクター構築、既知遺伝子の導入、発現の確認を行った。さらに、特定のウイルス遺伝子を導入し、糸状菌の生育や二次代謝産物について調査したところ、生育速度が低下し、二次代謝産物プロファイルにも変化が起こることを確認した。 ・データベース構築 国内外の研究協力者との連携にて打合せを進めているが、コロナ禍の影響を受け、進捗に著しい遅れが生じている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響を受け、データベース構築に資する国内外研究協力者との共働に遅れが生じ、データベース構築及び、それに資するRNAウイルス試料解析に著しい遅延が生じた。その為、それらに相当する次年度使用額が生じた。次年度使用額は、データベース構築及び、それに資するRNAウイルス(メタ)ゲノム解析に必要な試薬消耗品等に使用する計画である。
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