2018 Fiscal Year Annual Research Report
T cell reprogramming by metabolic and epigenetic modification
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18H05376
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 昭彦 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (90182815)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 抗腫瘍免疫 / T細胞疲弊 / メモリーT細胞 / Notchシグナル / 核内受容体 / 酸化的りん酸化 / 制御性T細胞 / PD1 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍浸潤リンパ球を体外で増幅して戻す養子免疫療法やキメラ抗原受容体(CAR)導入T細胞療法はがんの治療に有効であることが示されているが、T細胞の長期培養による疲弊化は避けられない。最近、新規メモリーT細胞サブセットである幹細胞メモリーT(Tscm)細胞が発見され新たなT細胞移入療法の素材として注目されている。我々はヒト末梢血よりEBウイルスや腫瘍抗原特異的T細胞あるいはCAR導入T細胞を増幅させたのち、Notch-ligand, hDLL1(OP9-hDLL1)を発現するOP9細胞と共培養することによりTscm様細胞(iTscm) に転換できることを示した。iTscm細胞はヒト化マウスモデルにおいて従来の活性化T細胞よりもはるかに強い抗腫瘍能力を示した。iTscm細胞の誘導機構や高い抗腫瘍性の原因を明らかにするために代謝特徴を検討した。ヒトiTscm細胞においてはグルコース取り込みが抑制される一方、ミトコンドリア酸化的リン酸化が増強された。ヒトiTscm細胞はまた、細胞内に中性脂肪滴を含み、脂肪酸代謝によって高い酸化的リン酸化を維持していることが示唆された。次にCD8陽性T細胞の疲弊化の分子機構の解明も行なった。我々は核内受容体NR4aファミリーがFoxp3の転写を直接活性化し制御性T細胞(Treg)の分化に必須の役割を果たすことを見いだした。Nr4aはTregのみならずPD-1陽性の疲弊したCD8陽性T細胞でも強く発現誘導されることがわかった。ゲノム解析の結果Nr4aはPD-1遺伝子のエンハンサー領域に結合しPD-1の発現を安定化することがわかった。NR4a欠損T細胞は疲弊化しにくく強い抗腫瘍効果を持っていた。Nr4aを阻害することによって、Tregの抑制とCD8T細胞の活性強化を介して抗腫瘍免疫を増強することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CAR導入T細胞をiTscm化することに成功した。またCD8T細胞の疲弊化を起こす遺伝子としてNr4aを発見し、これが抗腫瘍免疫を増強させる重要な標的遺伝子であることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)iTscmにおいてミトコンドリア酸化的リン酸化(OXPHOS)が増強される分子機構および細胞内に中性脂肪滴を蓄える仕組みを明らかにする。 (2) ヒトiTscmではテロメア長がナイーブT細胞レベルに回復している。これがiTscmの長寿性を担保していると考えられる。Notchシグナルによってテロメア長が回復するメカニズムを明らかにする。今年度はTERTなどテロメア関連の遺伝子発現を調べる。 (3)iTscm誘導のフィーダーフリー化を行う。現在はOP9-hDLL1ストローマ細胞との共培養が必要であるが、品質を一定するためおよび臨床応用のためにはフィーダーフリー化が望まれる。現在組替えNotchリガンドなどを用いて条件検討を行なっている。 (4)化合物ライブラリーからNr4a阻害剤をスクリーニングする。
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Research Products
(12 results)