2019 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的質感解析に基づく触覚的質感特徴抽出 ー光沢から触り心地を推定するー
Project/Area Number |
18H05394
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 弘美 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (10268154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 ジェーン 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (70251882)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 質感認知 / 質感再現 / 視触覚的質感 / 触覚的質感 / 高解像度画像解析 / 摩擦特徴抽出 / VR触察体験 |
Outline of Annual Research Achievements |
織物表面の3次元微視的幾何構造とBRDF(双方向反射分布関数)などの視覚的質感情報から,織物表面を指先(指腹)で触れて滑らせたときの摩擦力を推定するために,三原組織織物のうちの平織と朱子織の8種類の織物に対して,触覚的質感情報と視覚的質感情報を,それぞれ風合い計測KES(KAWABATA EVALUATION SYSTEM)システムと前年度構築した高解像度多視点多重露光画像計測システムを用いて取得し,視覚的質感情報と触覚的質感情報の相関を解析した. 触覚的質感情報はKESシステムにより,織物の経糸と緯糸方向それぞれの摩擦係数,表面粗さ,曲げ剛性を計測し,視覚的質感情報は多方向照明画像計測により,織物微小面のBRDF を取得し,織物表面の反射分布の異方性を抽出するためにAshikhmin モデルをフィッテングすることにより経糸と緯糸の直交する二方向それぞれの表面粗さを抽出した. 解析結果から,BRDFより推定された経糸と緯糸方向の表面粗さの比は,平織と朱子織それぞれの織構造(経糸と緯糸の浮き糸の長さの比)を表し,同時に,表面粗さの比は経糸と緯糸方向の摩擦係数の比と高い相関があることが確認された.また一部の,経糸緯糸の特徴が異なる平織では,経糸緯糸比が1:1であっても経糸緯糸それぞれの方向に対して摩擦係数は異なった.また,経糸と緯糸の交差により生じる糸の屈曲度と糸の曲げ剛性とに相関があることが確認された.摩擦係数においても,経糸の1)表面粗さ,2)太さ,3)張りおよび浮きと,緯糸の曲げ剛性に相関があることが確認された. 糸の屈曲は高解像度多視点多重露光画像計測により,局所的な視覚的触感情報として獲得できることと,糸の屈曲と(力学的)曲げ剛性に相関が有ることに基づいて(力学的曲げ剛性を推定することで,指腹と織物表面の接触面積および摩擦力の推定への可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・高解像度BRDF解析による,金属,紙,ゴム,織物等の材質を対象にした光学特性パラメータを抽出法,VR触察体験のための触察加重(約50グラム重)による対象表面の変形を基準とした材質分類法,織物の摩擦感推定のための視触覚情報の相関解析法,および,原色の織物における三次元幾何光学計算に基づく吸収係数の推定法等を提案し,学会・研究会・国際会議にて発表し,検証を進めている. (H 30年度およびR1年度 研究業績参照のこと). ・視覚情報と織物材質(力学特性)の関係を機械学習の手法で解明することが,研究課題の目標達成に必要不可欠であると認識し,新たに分担者を追加し,画像・映像と深層学習法を用いた織物の力学特性を推定する研究を進めている. ・三原組織織物(平織と朱子織)を対象とした触覚的質感情報(KESによる風合い計測値(経糸と緯糸方向の摩擦係数/曲げ剛性))と, 視覚的質感情報(高解像度多視点多重露光画像計測によるBRDF(双方向反射率分布関数)と3次元微視的幾何構造)の解析結果から,1)経糸と緯糸方向の表面粗さの比は織構造を表していること,2)表面粗さの比は経糸と緯糸方向の摩擦係数の比と高い相関があること,3)経糸と緯糸の交差により生じる糸の屈曲度と糸の曲げ剛性とに相関があること,4)経糸のa)表面粗さ,b)太さ,c)張りおよび浮きと,緯糸の曲げ剛性に相関があること,が確認された. ・糸の屈曲は高解像度多視点多重露光画像計測により,局所的な視覚的触感情報として獲得できることと,糸の屈曲と(力学的)曲げ剛性に相関が有ることに基づいて(力学的)曲げ剛性を推定することで,指腹と織物表面の接触面積および摩擦力の推定への実現に近づくことが示唆された. 以上から,概ね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
三原組織織物を対象とした触覚的質感情報(KESによる風合い計測値(摩擦係数/曲げ剛性))と,視覚的質感情報(BRDF(双方向反射率分布関数)と3次元微視的幾何構造)の解析結果から,経糸と緯糸方向の表面粗さの比は,平織と朱子織のそれぞれの織構造を表し,同時に,摩擦係数の比と高い相関があることが確認された.また, 糸の(視覚的)屈曲より(力学的)曲げ剛性を推定することで,指腹と織物表面の接触面積および摩擦力の推定の可能性が示唆された.そこで本年度では,織物の視覚的質感情報から摩擦力および摩擦係数の推定モデルを構築する.摩擦力を推定するためには接触面積を導き出す必要があり,接触面積は織物の表面粗さが小さく柔らかいほど増加する.そのため,前年度における糸の屈曲と糸の剛性の相関とヘルツの接触理論を用いた指腹と織物表面の接触面積の算出法に基づく摩擦力推定モデルを提案し,その評価を行う.現状のBRDFから抽出したマクロな表面粗さでは相対的な摩擦係数の大小しか推測できないため,糸表面の微視(的幾何)構造の法線マップより屈曲度やファインな表面粗さも抽出する.さらに, 織構造,糸の屈曲よる曲げ剛性,指腹と織物表面の接触面積等から推定された摩擦力および摩擦係数を用いる,触覚シミュレーションの構築を検討する. また,織物の視覚情報から触覚情報(例えば,触り心地のよさ)を推定するプロトタイプシステムを構築することを目標とし,①前年度構築した織物データセットの拡充とグランドトゥルースの追加(ペアワイズの比較による人の主観的指標または触覚センサによる客観的計測と想定),②低/高分解能画像,時系列画像,反射特性を表すBRDFなどから,触覚情報の推定に最も効果的な組み合わせの特定,③入力織物の画像データから触覚情報を推定する,end-to-endの深層学習モデルの構築,の手順を踏みながら進める.
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