2019 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding of brain-state of creative insight: switching of large-scale brain network
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18H05395
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
小川 剛史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (10614323)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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Keywords | 創造性 / 脳機能イメージング / ひらめき / 機械学習 / 状態遷移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「ひらめき」を生み出す脳内メカニズムを解明することである。その意義は、近年のAI技術の発達により、創造的な問題解決を必要とされる場面が増え、個人の創造性の向上が重要になると考えられるからである。今年度は、(1)スパース線形回帰によるfMRI信号からのマクロな脳内ネットワークの抽出、(2)空間的ひらめきと言語性ひらめきの特異性と共有性の特定、という2つの問題を解決し、ひらめきに関わる動的な脳状態の解明を試みた。 まず、fMRI信号からのマクロな脳内ネットワークの検出については、被験者が報告した問題解決時の思考パターンに基づき、分類化することを試みたが、データのサンプルサイズが想定したよりも大きすぎたことでスパース線形回帰を用いることが困難となった。そこで、教師なし学習の一つである隠れマルコフモデルを用いて、脳状態の推定を行った。14のネットワークを定義し、安静時および空間的ひらめき課題を行っている最中の3日間の脳活動データを15名分取得し、モデルの学習を行った。その結果、ひらめきによる問題解決の直前は、すぐに解いた場合や試行錯誤を行いながら解いた場合に比べ、デフォルトモードネットワークが活性化していた。隠れマルコフモデルから、10個の脳状態が抽出され、ひらめきを得た時に特有な脳状態は、その出現頻度と問題の正答率に正の相関があることが分かった。また、ネットワークの統計的因果探索を行うための手法とその検証を行い、論文誌に投稿した。 次に、従来研究で用いられていた言語性ひらめきとの関係性を精査するために、日本語版の言語性ひらめき課題を開発した。コロナ禍で、実験実施に制限があったため、詳細な解析までは完了できなかったが、小規模な予備的実験と、少数の被験者に対して脳活動計測実験を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画時に適用する予定であった解析アルゴリズムの検討を行った結果、当初の想定に反し脳状態の予測精度が不十分であることから、ひらめきの脳状態の検出が困難であることが判明した。研究遂行上、脳状態の検出が不可欠なため、研究計画を見直し、fMRIデータに対し、データ駆動的解析法である隠れマルコフモデルを用いて、実験データを解析しなおすことになった。さらに、研究計画を見直している最中に、コロナ禍による緊急事態宣言等により、研究所において外部被験者を対象とした実験を中止せざるを得ない状況が生じた。それにより、予定していた実験が実施が出来ず、データの取得および課題プログラムの開発に遅れが生じた。当初は課題作成にあたり十分な行動実験や認知機能検査も予備的に行う予定であったが、実験期間も限られていたため、当初予定していたよりも少ない人数での実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
言語的ひらめき課題を行っている最中の脳活動データが不足しているため、引き続きデータ取得をしていく必要がある。また、空間的ひらめき課題において抽出された脳状態と言語的ひらめき課題で得られた脳活動から得られた脳状態について、共通性や特異性について精査する必要がある。これにより、モダリティが異なる問題解決に対する脳の状態を定量化することができるようになると考えられる。
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