2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K20420
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
池田 文人 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (60333647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 誠 北海道大学, 高等教育推進機構, 名誉教授 (60322856)
岩間 徳兼 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (70608900)
飯田 直弘 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (80578063)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 論理推論 / リサーチクエスチョン / 教育プログラム / 職業教育 / 探究学習 / 構造的把握力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は2件の研修を実施した。一つは、NTTデータ北海道向けである。NTTデータ北海道は現在、道庁が進めるヘルスケアDX事業に関わっている。北海道は2040年に65歳以上の人口が4割を超え、医療制度の崩壊が危惧されている。その解決には斬新なアイデアが求められることから、本研究で開発したKCKI(Knowledge Creation by Knowledge Inheritance)モデルに基づきリサーチクエスチョン(RQ)を創出する研修プログラムの依頼を受けた。KCKIモデルは、現状を把握する「帰納推論」、把握したことから新しいことを想像する「演繹推論」、そして想像を実現する方法を考案する「仮説推論」を経て、RQを創出する。本研修では、各推論を3時間ずつ3日に分けて実施し、最後に、不足が確認された帰納推論だけをもう一度実施した。本研修は創造的なRQの創出だけでなく、業務上の様々な場面で有効であることがわかった。本研修の成果は、現在、日本職業教育学会で発表する準備を進めている。二つ目は、札幌啓成高校向けに、帰納推論に関する研修を3時間で行なった。帰納推論は、複数の前提と結果から規則を導く論理推論である。例えば、「昨日の夜雨が降った」という前提と「今朝は庭が濡れていた」という結果、そして「1週間前の夜も雨が降った」という前提と「その翌日も庭が濡れていた」という結果から、「雨が降れば庭が濡れる」という規則を導く。このような帰納推論は科学の基本であるが、初等中等教育では規則が知識として教えられてしまう。そこで本研修ではノーベル経済学賞を受賞した経済行動学の法則について帰納推論する研修を行なった。本研修によりSPI3のオプションで実施される構造的把握力テストの結果が上昇した。これは社会でも注目される能力であり、現在、日本創造学会での発表準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リサーチクエスチョン形成のためのKCKIモデルに基づく研修を、企業向けに4回、高校向けに1回、実施した。企業向けの研修については、修了後に受講者およびその上司にインタビュー調査を行い、3つの論理推論がそれぞれ業務の異なる場面において有効であることが確認できた。本研究成果は、日本職業教育学会にて論文投稿を計画中である。高校生向けの研修では、知識形成の重要な思考である帰納推論に特化した内容で実施した。その効果を検証するために、主要企業で採用が進む職業特性試験SPIのオプションである構造的把握力テストを研修の前後で実施した。本研修の受講により、ある特定の特質をもった生徒に効果が確認された。こちらも論文投稿を計画中である。他方、3つの論理推論に対する質問の分類基準の開発を行った。本基準を用いて、大学院共通科目の受講者約20名の7回分の質問を分類することにより、質問傾向を明らかにした。この成果は、国際ジャーナルへの投稿を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
質問分類基準の精緻化を図った上で、全国の高校生向けに質問力テストを実施し、得られた質問を分類しデータベースを構築する。そしてこの分類された質問を学習させた質問自動分類AIの開発を試みる。本テストの実施にあたり、高校での学習内容を横断する質問力テスト問題を作成するとともに、CBT(Computer Based Testing)システムを開発する。 一方、KICKIモデルを用いたリサーチクエスチョン形成支援のための研修を広めるために、研修のテキスト、課題などを開発するとともに、CBL(Computer Based Learning)システムを開発する。 次年度は本研究費の最終年度であるため、これまでの研究成果をまとめた報告書を作成し、公開する。
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Causes of Carryover |
質問を自動分類するAIを開発するために十分な質問を集めることができなかったため、次年度は全国的な質問力テストを実施し、そこで収集した質問を用いて質問自動分類AIの開発を試みる。これまでの研究で、子どもたちに質問を挙げさせるためには、そのためのトレーニングが必要であることがわかっていた。今年度はそのための研修内容のブラッシュアップに時間を要したため、次年度に当該AIの開発を持ち越すこととした。
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Research Products
(2 results)