2022 Fiscal Year Annual Research Report
熱伝導下における一次転移：新しい現象の同定と熱力学の拡張
| Project/Area Number |
20K20425
|
|---|
| Research Institution | Kyoto University |
|---|
Principal Investigator |
佐々 真一 京都大学, 理学研究科, 教授 (30235238)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯川 諭 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20292899)
齋藤 一弥 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30195979)
中川 尚子 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (60311586)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| Keywords | 熱伝導 / 相共存 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
大域熱力学の現象論については、エントロピー最大原理の拡張にもとづく定式化の論文の掲載が決定し、これで基本的な知見についての論文は全て出版されたことになる。ただし、重力が加わった系については、不明な点が残されており、検討をすすめている。特に、平衡下では、異なる密度の状態が相共存するとき、密度が重い物質が下にくることは重力ポテンシャルの効果から直ちに理解できるが、重力に抗して熱流をかけるときには、ある種のフラストレーションが生じるので、どのような状態が実現されるのかは自明ではない。この現象についての現象論的考察については論文として準備中である。さらに、大域熱力学による記述につなげたい。
ゆらぎの記述については、境界駆動粒子拡散系に対して密度場の定常分布の定式化をすすめた。２０２１年に得られていた公式の導出のチェックを行い、論旨を整理した。特に、Zubarev-MacLennan表現にもとづいて定常分布の補正を計算する際、弱ノイズ極限の評価において、長時間領域では界面のブラウン運動の寄与を取り出すことが本質的であることを見出した。この結果、ゆらぎの解析による変分原理と大域熱力学による変分原理が一致するという綺麗な結果を得た。
数値計算については、ハミルトンポッツモデルをもちいた相共存状態の熱伝導への寄与を調べた論文が完成し、投稿した。この結果は、非常によい精度で、大域熱力学と一致している。また、系の大きさや精度をおとすと、局所平衡になることも明らかになった。分子動力学の結果が大域熱力学と一致しない理由を考える上でヒントになっている。分子動力学においてゆらぎの性質を調べた。
実験については、水では、系の設定上において様々な問題があり、解決するのが難しいと判断するに至った。そこで、液晶を用いた実験を開始し、基礎的事項の確認から再検討を行った。
|
