2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of statistical causality of life time and abrupt termination events in magnetically confined plasmas
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20K20426
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 弘司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20200735)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射崩壊 / ディスラプション / サポートベクターマシン / 全状態検索 / スパースモデリング / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はデータ駆動型アプローチにより、磁場閉じ込めプラズマの挙動について要素還元によるモデル化や統計回帰解析による帰納的な推定を越えた発見的な仮説を提案することである。特に自律的な非平衡状態の存続時間及びその存続を突発的に破壊する現象の予知に焦点を当て、予知モデルの精度向上とその説明可能性の追求を行っている.これまでのトカマクプラズマのディスラプションとヘリカルプラズマの高密度運転と放射崩壊の研究をさらに進めるとともに,プラズマの非接触化発現現象への取り組みを開始し,方法論の応用範囲の拡大を図った.対象とする問題を2値分離問題として定式化し,機械学習の一つであるサポートベクターマシンと全状態探索を用いたスパースモデリングによって得られた分離境界方程式を用いて,2つの状態の発生可能性を定量化できることを示した.この分離境界方程式は抽出された実験観測値によるべき乗則として表現することによって,物理的な仮説の提示につなげた.同時に,実時間での発生可能性信号を生成できることから,この信号によってプラズマの温度・密度を制御し,崩壊を避ける高密度運転を大型ヘリカル装置において実証した.さらに,この方法論をプラズマの非接触化という遷移現象に応用した.プラズマの非接触化は深刻なプラズマ対向面の熱負荷を軽減する画期的な現象であるが,その安定な維持が課題となっている.本研究課題で開発した方法論により,外部からの共鳴磁場印加とこれへのプラズマの応答が遷移の鍵となっていることを定量的に抽出しつつある.さらに、観測値の時系列変化に注目した解析を開始した。これらの研究成果を2編の査読付き学術論文および1編の会議論文に公表するとともに,国内学会で2回,国際学会で4回の発表を行った.このうち国際学会発表2件は招待講演である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度においては新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延のため、計画していた海外のW7-X実験(独),DIII-D実験(米)に一定期間滞在しての実験遂行、情報収集及び研究成果発表のための学会出席などのための海外渡航を断念せざるを得なかった。このため、これらの計画は令和4年度以降に繰り延べることとなった.一方,このような環境にあっても,国内の実験プラットフォームである大型ヘリカル装置(LHD)実験では、充実が図られた遠隔実験参加およびデータアクセス環境を活用するとともに蔓延状況を鑑みながら、現地での実験参画および専門家との議論を行うことがほぼ十分にできた。これによって、海外との共同研究を見送った代替として、LHDにおける実験研究を充実させ、この方面では計画以上の成果を得ることができたと考える。特に、このべき乗則表現に抽出されたプラズマの物理諸量についてプラズマ輸送シミュレーションと実験観測を照らして考察し、崩壊可能性と炭素不純物による放射パワーの増大が起きる温度領域が低温度領域へシフトすることの相関を示した。これは放射崩壊の前兆現象の因果関係を理解する上での手がかりと考えられる。放射崩壊警告信号を実時間で計算し、ガスパフ燃料供給の許可と遮断および追加加熱の入り切りを行う制御実験を自ら企画提案し、遂行した。その結果、放射崩壊を避けつつ、高密度のプラズマ運転が得られることを実証した。このように、磁場閉じ込めプラズマの放射崩壊という突発崩壊現象の予知と回避、さらにはこの現象の背景にある物理機構の解明に大きな進展をもたらした。この固有の現象を対象としたものであるが大きな成果を得られたことは、この手法をさらに時系列データに展開することによる精度向上と因果関係の同定へ、また、他の現象への応用につながる説得力をもたらしている。
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Strategy for Future Research Activity |
目的を達成するために,これまでの実績をもとに手法の高度化とモデルの汎化性能の向上を図る。機械学習では帰納論理に限界があるため,信頼性を高めるには異なった物理的考察と組み合わせることが肝要である.このため,モデルの説明可能性が追究できるサポートベクターマシンや主成分分析などの統計的アプローチをとる.モデルから物理的な仮説をたて,理論シミュレーションとの対比や能動的実験で検証を進める.前者では仮説に沿った理論シミュレーションによるセミパラメトリックな探索と人工合成信号と実験との比較を,後者ではモデル表現式による合成信号を帰還制御や摂動印加に利用し,その応答観測により、変化可能性の閾値、応答遅れ時間およびヒステリシスの関係を評価する。これらの実験をもとにハザード関数を用いた存続時間の解析も図る。また,これまでは時刻ごとに切り出されたデータを集積していたが、時系列データを対象とした主成分分析など、変化の検知の観点から因果関係に迫る試みも進める。また、対象とする現象として、ディスラプション(高ベータ状態の存続)と放射崩壊(高密度状態の存続)にプラズマ対向壁の熱負荷軽減方策として運転上も極めて重要な課題である非接触化の発現条件とその維持を重要課題として取り上げて研究を進める。最終段階においては、得られた方法論を国際協力によりW7-Xステラレータ(独)で検証することと、新たな国内の大型実験プラットフォームとなるJT-60SA(量研機構)でのディスラプション予知・回避法について共同研究者と検討する.さらには,本研究課題が既知の事実が,未来の出来事についての予測に理由を与えることができるか?すなわち,プラズマ放電パターンという集団の統計的性質を固有の放電の時間変化に当てはめることができるかという問いに挑戦し,学際的な議論の糧とする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス禍のため海外渡航が極めて困難な状況により,欧州物理学会プラズマ物理会議や核融合技術シンポジウムなどの国際研究集会参加による情報収集と成果発表およびマックスプランクプラズマ物理研究所(ドイツ)のW7-X実験あるいはジェネラルアトミックス社(米国)のDIII-D実験のおいて,先方に一定期間滞在しての共同研究を先送りとせざるを得なかった.国内においても相当の制限があり,対面については計画通りにできなかった.このような状況に対応するために,遠隔地参加・コミュニケーション・データアクセスのための通信や計算機環境の充実を図った.今後は,コロナウィルスの状況に対して対面と遠隔の両面から柔軟に対応し,目的の達成に向けて,研究計画の遂行に努める.
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[Journal Article] Data-Driven Control for Radiative Collapse Avoidance in Large Helical Device2022
Author(s)
Tatsuya YOKOYAMA, Hiroshi YAMADA, Suguru MASUZAKI, Byron J. PETERSON, Ryuichi SAKAMOTO, Motoshi GOTO, Tetsutaro OISHI, Gakushi KAWAMURA, Masahiro KOBAYASHI, Toru I TSUJIMURA, Yoshinori MIZUNO, Junichi MIYAZAWA, Kiyofumi MUKAI, Naoki TAMURA, Gen MOTOJIMA, Katsumi IDA
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Journal Title
Plasma and Fusion Research
Volume: 17
Pages: 2402042
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Likelihood identification of high-beta disruption in JT-60U2021
Author(s)
Tatsuya Yokoyama, Hiroshi Yamada, Akihiko Isayama, Ryoji Hiwatari, Syunsuk Ide, Go Matsunaga, Yuya Miyoshi, Naoyuki Oyama, Naoto Imagawa, Yasuhiko Igarashi, Msato Okada, Yuichi Ogawa,
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Journal Title
Plasma and Fusion Research
Volume: 16
Pages: 1402073
DOI
Peer Reviewed
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