2019 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導量子計測を使った電波分光で探る超軽量ダークマター - その実験手法の確立
Project/Area Number |
19H05499
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田島 治 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80391704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 雅人 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10638175)
小栗 秀悟 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (20751176) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | ダークマター / 超伝導センサー / 電波分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河の重力相互作用を支配する「ダークマター」。その正体解明にむけて様々な探索実験が進行しているが、決定打となる結果はまだない。そこで、従来の常識にとらわれない超軽量ダークマター“Dark Photon Cold Dark Matter”(略してDP-CDM)の可能性が注目されている。超弦理論やインフレーション宇宙論といった理論的同期があるにもかかわらず、従来の計測技術では探索困難な質量領域が広大にある。そのため、世界中の研究者が手をこまねいているのが現状である。本研究は、最新の超伝導計測技術を駆使して、この状況を打開する。最先端の超伝導量子型センサーと超伝導共振器を組み合わせた電波分光により、DP-CDMを探索する実験手法の確立を目指す。超伝導分光のパイオニアである海外協力者と共に、研究チームの先行実績と資産を活かし、国内では実例のない研究にチャレンジしている。
超伝導分光の周波数分解能を高めるための研究、超伝導デバイスを評価するための研究、読み出し回路を広帯域化する研究を行った。分光方式は、フィルターバンク方式、オンチップ・フーリエ分光方式、ファブリペロー共振方式などがある。フィルターバンク方式は天体観測への実用という高い実績を誇り、現在f/df = 1000を達成している。ただし、さらなる分解能向上のためには、超伝導回路の細線化が必須という課題がある。そのため、オンチップ・フーリエ分光方式のデザイン・シミュレーション研究に着手した。一方、海外協力者が実績を有するフィルターバンク方式の超伝導センサー使用して、超伝導デバイスを評価する装置の開発にも着手した。そして、読み出し回路を従来より5倍広い帯域にするために、高速DACチップを制御するファームウェアーを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画書に記述した3つの課題(超伝導分光の周波数分解能を高めるための研究、超伝導デバイスを評価するための研究、読み出し回路を広帯域化する研究)、それぞれに対して当初の予定通りに研究を開始し、進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に構築した超伝導デバイスを評価する装置を使って、超伝導センサーの基本特性を測定する手法を確立する。その基本特性は、準粒子数(乖離したクーパー対の数)や、準粒子寿命(乖離したクーパー対が再結合するまでの時間)などによって表現されるが、それらは超伝導フィルムの転移温度(Tc)に強く依存する。そのため、使用しているデバイスのTcを数%レベルで把握することがセンサー設計の第一歩となる。しかしながら、実際のセンサーは複数の超伝導材料(例えばTcの高い材料とTcの低い材料)の組み合わせで構築され、通常Tcの低い材料は読み出し線に直結していないため、そのTcを測定する方法はない。昨年度に開発したデバイス評価方法を応用すれば、この測定が可能になる。今後、その原理実証を行う。
超伝導分光の周波数分解能f/df = 100万を目指し、前年度は様々な技術を精査してきた。その中でもオンチップ・フーリエ分光方式に注目し、シミュレーション研究を進めてきた。今年度は、シミュレーションに基づく設計を行い、その試作と性能評価を目指す。
また、前年度にはGHz帯域のDACチップの制御と基本性能測定を行ってきた。今年度は、超伝導センサーを読み出すための基本ロジックの実装を進め、読み出し帯域の拡大を進める。
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