2020 Fiscal Year Research-status Report
超伝導量子計測を使った電波分光で探る超軽量ダークマター - その実験手法の確立
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20K20427
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田島 治 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80391704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成瀬 雅人 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10638175)
鈴木 惇也 京都大学, 理学研究科, 助教 (90795014)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダークマター / 超伝導センサー / 電波分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河の重力相互作用を支配する「ダークマター」。その正体解明にむけて様々な探索実験が進行しているが、決定打となる結果はまだない。そこで、従来の常識にとらわれない超軽量ダークマター“Dark Photon Cold Dark Matter”(略してDP-CDM)の可能性が注目されている。超弦理論やインフレーション宇宙論といった理論的同期があるにもかかわらず、従来の計測技術では探索困難な質量領域が広大にある。そのため、世界中の研究者が手をこまねいているのが現状である。本研究は、最新の超伝導計測技術を駆使して、この状況を打開する。最先端の超伝導量子型センサーと超伝導共振器を組み合わせた電波分光により、DP-CDMを探索する実験手法の確立を目指す。超伝導分光のパイオニアである海外協力者と共に、研究チームの先行実績と資産を活かし、国内では実例のない研究にチャレンジしている。
前年度に構築した超伝導デバイスを評価する装置を使って、超伝導センサーの基本特性を測定する新しい手法を確立し、その研究結果を論文発表した。超伝導センサーの基本特性は、準粒子数や、準粒子寿命などによって表現されるが、それらは超伝導フィルムの転移温度(Tc)に強く依存する。そのため、使用しているデバイスのTcを数%レベルで把握することがセンサー設計の第一歩であり、この研究の意義は大きい。超伝導分光に関しては、オンチップ・フーリエ分光方式に注目し、シミュレーションに基づく設計を行い、その試作と性能評価を行っている。また、従来よりも5倍広い帯域の読み出しエレクトロニクスの開発に成功し、実際に超伝導センサーを用いたend-to-end実験も行った。
その他、宇宙マイクロ波背景放射の温度異方性の測定手法を応用したDP-CDMの探索手法を新たに考案し、その実験研究も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実施計画書に記述した3つの課題(超伝導分光の周波数分解能を高めるための研究、超伝導デバイスを評価するための研究、読み出し回路を広帯域化する研究)、それぞれに対して当初の予定通りに研究を進めているだけでなく、当初予想してなかった新しい実験アイデアを創出し、その研究にも着手しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
超伝導デバイスを評価する装置を使って、TLSノイズとよばれる超伝導センサーに特有のノイズの低減手法について研究を行う。 オンチップ・フーリエ分光に関しては、シミュレーションに基づく設計と試作を行ってきたので、試作品の性能評価結果に基づいて改善を行っていく。 本年度に開発に成功した読み出しエレクトロニクスをさらに発展する。具体的には5G通信技術を応用したRFSoCを導入し、さらなる広帯域化の実現を目指す。 さらに、昨年度に新たに考案した「宇宙マイクロ波背景放射の温度異方性の測定手法を応用したDP-CDMの探索実験」を進める。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた物品がコロナ禍で流通が滞ったため次年度使用額が生じた。次年度、早急に購入手配を行う計画である。
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Research Products
(16 results)