2019 Fiscal Year Annual Research Report
核ガンマ線イメージング観測が開く新しい太陽系及び外縁天体の描像
Project/Area Number |
19H05500
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷森 達 京都大学, 理学研究科, 教授 (10179856)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | MeVガンマ線天文学 / 田被飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC) / 宇宙背景拡散MeVガンマ線 / 義眼中心拡散ガンマ線 / カニ星雲 / 気球実験 / 核ガンマ線スぺクトロスコピー |
Outline of Annual Research Achievements |
3年で地球周囲軌道上にある大型の全天観測型核ガンマ線衛星(重量~2トン:主目的:超新星爆発、ガンマ線バースト等、宇宙物理学用探査)による小惑星帯、KBO、オールト雲などを対象に広視野観測で可能な物理量計測と衛星感度の関係を定量評価する。また100kg程度のガンマ線観測装置を搭載した専用探査衛星による月、火星等の周回軌道での精密資源分布探査。 申請では全体に必要な高感度ガンマ線スペクトル能力を実現するため高エネルギー分解能シンチレーターの調査、試験を行う。以下に年次計画を示す。 H31年度はそれらの基となるH30年の豪州での気球実験によるETCCの性能評価、雑音状況を把握し、今後のガンマ線衛星のためETCCの性能を解析面での向上を起こった。その中、当初予想した以上の高い雑音除去能力が得られ、実験前に予想した宇宙背景MeVガンマ線の2-3倍程度の雑音量が、宇宙背景MeVガンマ線以下まで低減に成功、銀河中心からの拡散ガンマ線が視野にある間、銀河中心拡散ガンマ線が雑音より多く、ライトカーブで直接観測できた。 今までMeV宇宙観測は衛星においてさえも雑音γ線は宇宙背景MeVガンマ線、銀河拡散ガンマ線より10倍程度強く、このように単純に検出されることは無かった。ETCCのTPCでの粒子飛跡検出は宇宙線雑音の除去に優れている証拠である。 この成果を踏まえ、雑音ガンマ線除去法を確立するため、散乱ガンマ線検出器の選定を雑音解析がある程度進んだ段階まで遅らせる必要が出た。そのため本申請で予定していたシンチレーター選定を1年遅らせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次期MeVガンマ線宇宙観測のためのシンチレータ調査は次年度に繰り越したがR、2年度に別の医療応用プロジェクトで、本申請で予定していたGAGGシンチレーターを購入、実際そのプロジェクトでETCCに搭載し試験が実施された。そのデータがあるため本申請で予定した小型シンチレータの購入が不要になった。SMILE2+(SM2+)実験のデータ解析と比較することで、従来の安価なGSOをPMT読出しからMPPC読出しへ変更することでエネルギー分解能が11%から7%に改善することが判明。GAGGの分解能は5~6%で2%程度の改善にとどまる。陽電子対消滅511keVの銀河中心からの検出をSM2+のデータから判断すると11%から7%への改善で充分な改善が期待できることが判明した。またデータ解析ではSM2+のデータで電子飛跡の解析の重要性は雑音除去において重要であるが、さらにETCCの特徴である電子飛跡の方向から到来ガンマ線の方向決定が行え2次元Point Spread Function (PSF)が決定できる。今の現状ではPSFで25度程度でかに星雲等の観測ではまだ不足である。電子飛跡の精度を上げるため、AI法の導入による方向精度の大幅な改善の検討を始めた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度のSM2+の解析からコンプトン散乱の電子飛跡の精密測定が宇宙線雑音の除去に予想以上の成果があった。ただMEVガンマ線の特徴であるコンプトン散乱が主反応であるため、ガンマ線はほぼすべて吸収では無く散乱される。そのためMeV領域では大気ガンマ線のような雑音ガンマ線ばかりでなく信号である宇宙背景MeVガンマ線が直接検出器に入る以外に大気や装置で散乱され大気ガンマ線に混じっって、これが大気ガンマ線と同等に近い影響を与えていることがわかった。また銀河中心ガンマ線も強く、さらに10度以上に広がっている可能性があるが、その直接信号以外に大気、装置の散乱ガンマ線が強く、信号を直接ガンマ線とそれに混じっている散乱成分を分離する必要が分かってきた。それを分離するためには大気ガンマ線の精密な分析と精密なシミュレーションによる散乱成分の予想が不可欠である。現在、それを行うためにGAGGシンチレーター購入が不要になった経費で、シミュレーションを行うための計算機群を増強し、天体ガンマ線の直接成分と散乱成分の分離をおこなう手法を確立していきたい。
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