2020 Fiscal Year Research-status Report
核ガンマ線イメージング観測が開く新しい太陽系及び外縁天体の描像
Project/Area Number |
20K20428
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷森 達 京都大学, 理学研究科, 教授 (10179856)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガンマ線イメージング分光 / 元素分析 / コンプトン散乱 / 電子飛跡検出型コンプトンカメラ / 銀河拡散ガンマ線 / Deep Leaning |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系では宇宙線と天体の衝突で発生するガンマ線を画像計測して外縁部小天体群を観測する手法を開拓する。また核γ線の特徴を生かし月等岩石惑星の元素分布測定の可能性を探る。我々は核γ線のコンプトン散乱を再構成する電子飛跡検出コンプトンカメラ(ETCC)を開発、核ガンマ線画像分光を可能にすることで従来の観測手法より3桁高感度を実現、このような計測可能性をETCCの実測性能を踏まえてシミュレーションで検証する。そのために2018年に行った気球による銀河観測のデータの精密な解析と調査が必要となる。このデータでは銀河面ガンマ線が明確に観測されているが、どのような分布やスペクトルが得られるかを分析、その手法を使いこのデータから太陽、黄道面ガンマ線など太陽系ガンマ線の検出の可能性の調査が行える。今年度は銀河面ガンマ線の精度を上げるためガンマ線の集光度を表すPoint Spread Function (PSF)の改善に注力した。このPSFはETCCが図る電子飛跡の方向があって初めて決まるため従来のMeVガンマ線観測では決まらず、そのため観測の精度が大変悪かった。このPSFをどれだけ小さくするかが重要となり、それは電子飛跡再構成の精度に依存している。電子飛跡はガス中を何度も散乱しジグザク構造となり方向解析を非常に困難にしている。ただ人間の目で見るとわかりやすい場合もあり、AIのどう導入が有効と考えられ、その導入を行った。そのためAI専用のGPUを搭載した計算機クラスターを構築し、AIを用いた飛跡解析を可能した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度からPDが着任。電子飛跡の精度改善に取り掛かった。AI法を行うためにGPUを搭載した計算機クラスターを構成し高速でAI法を解析に適応できるシステムをまず構築。AI法を比較するため低エネルギー電子の飛跡の方向を得る手法として一般的なSkewness法を適応した。それでも以前の単純なヒット点の平均化よりPSFは大天頂角では改善された。しかしまだ30度と大きな誤差範囲がある。AI法を導入し、学習用データを大量に作成し、AIの階層のチューニングなどを行い改良を重ねて最終的にはPSF15度、天頂角依存性も無くなった。そのため銀河中心拡散ガンマ線と宇宙背景ガンマ線の分離に大きな改善があり、銀河中心拡散ガンマ線のスペクトル、分布ともに精度が大きく改善した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、AI法をまとめて論文を作成し投稿準備中である。銀河中心ガンマ線と宇宙背景ガンマ線の分離が明確になり、それに基づきスペクトルと分布を定量的に求めている。また同時に宇宙背景ガンマ線のスペクトルの精度も改善される。特に銀河中心が視野に入っていない時間帯は大気ガンマ線と宇宙背景ガンマ線であり、天頂方向に依存してその比率が変わっていく。これがより鮮明なるため宇宙背景ガンマ線と大気ガンマ線の分離が明確になり、宇宙背景ガンマ線スペクトルがより高精度になる。これは最終目的であるカイパーベルトがある黄道面と銀河面、それ以外の空間でのガンマ線スペクトルの変化の検出限界が下がり、カイパーベルトに対してより厳しいガンマ線放出制限が期待できる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため予定していた国内、国際学会出席がオンラインになり経費が不要になったことが主な理由である。次年度コロナ禍が収束し海外への派遣が可能な場合は出来る限り多くの学会に出向き結果を報告していいく。同時に2-3篇の論文を作成、投稿を行う予定でいる。2021年もコロナ禍が続き海外の学会へ行けない場合は、シミュレーション計算力を増強して宇宙線による大気ガンマ線、装置ガンマ線をすべてシミュレーションで再現できるようにし、雑音の予想精度を上げ予定している。次期気球計画の太陽系内天体の感度予想の精度向上を図る。
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