2020 Fiscal Year Research-status Report
地球最古の地下水圏環境に生息する微生物群のゲノム進化と存続メカニズムの解明
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20K20429
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
稲垣 史生 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 室長 (50360748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 志野 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10557002)
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30386619)
浦本 豪一郎 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 講師 (70612901)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生命生息可能条件 / 閉鎖系地下水圏環境 / 地下生命圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
カナダ・オンタリオ州に位置するキッド・クリーク鉱山の深さ約2.4kmの水平抜水孔に設置した中空糸膜カートリッジから、カートリッジ内の上流側と下流側の二つのフィルターサンプルを分取し、メタゲノム及びメタトランスクリプトミクス解析用の環境DNAの抽出・調整を行なった。その後、メタゲノム解析に必要なDNAシーケンスとde novoゲノムアッセンブリを行い、約400Mbpの塩基配列を得た。その結果、上流と下流のサンプルに差異はほとんどなく、地下水に含まれる微生物細胞が均一に中空糸膜に捕集されていることを確認した。メタゲノム中の16S rRNA遺伝子に基づく微生物群集構造は、前年度に実施したPCR法により増幅された16S rRNA遺伝子配列に基づく群集構造の結果とほぼ相補的であり、北アメリカ大陸北東部のマーセラス頁岩にて検出されたProteobacteriaやFirmicutesを優占種とする群集組成に類似する結果を得た。その中でも、炭化水素資化性を示す通性嫌気性のプロテオバクテリアや一酸化炭素もしくは二酸化炭素からホモ型酢酸生成を行う嫌気性化学合成細菌、硫酸還元や硫黄分別反応に係る機能遺伝子を有する細菌種が優占種として検出されたことは、非生物学的な有機物生成プロセス以外の微生物代謝プロセスが起きている可能性を示唆している。また、メタン菌などのアーキアは検出されておらず、仮に存在しているとしても生態系の中では希少種であることが推察された。次年度以降は、詳細な比較ゲノム解析とメタトランスクリプトーム解析を進め、当該環境に存在する地下微生物生態系の存続メカニズムとゲノム進化、そして生物地球化学的な物質循環への寄与について考察を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していたメタゲノム解析に必要なDNAの精製・抽出作業を完了し、シーケンスとde novoゲノムアッセンブリによる一次データを得た。中空糸膜カートリッジ内に捕集された微生物群集に局所的な差異がないことが判明したため、同時アセンブリによるビンゲノムの高品質化を図り、優占種のゲノム構造解析を進めている。従って、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られたメタゲノムデータを用いてゲノムビニングを行い、メタゲノム・アッセンブリ・ゲノム(MAG)に基づく優占種のゲノム構造と代謝を推定する。また、MAGに係るゲノムシーケンスの品質を向上させるため、差異が認められなかった上流側と下流側の二つの中空糸膜サンプルから得られたシーケンスの同時アッセンブリーを行い、その高品質化を試みる。また、本研究で得られたMAGをマーセラス頁岩などから得られた既報の地下微生物群集のMAGとの比較ゲノム解析を行う。さらに、中空糸膜サンプルからメタトランスクリプトーム解析用のRNAの抽出を試み、それが得られた場合には、各構成微生物の遺伝子発現プロファイルに基づく現場代謝活性の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
コロナの影響により、海外での現地サンプリングや国際会議への参加、国内出張を見送っている。それらの状況を踏まえ、オンライン会議を活用し、実施可能な研究を段階的に進めている。当該助成金は、次年度に予定しているメタゲノムの追加分析とメタトランスクリプトミクス分析等に用いる。
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Research Products
(7 results)