2020 Fiscal Year Research-status Report
Wave-Argo-Typhoonの開発と国際的な展開
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20K20437
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小平 翼 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (60795459)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自律昇降型海洋観測 / 波浪・海洋結合観測 / 荒天下対応 / 防災 / Argo / eXpendable Wave Gauge / 波浪海氷相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
Argoフロートに代表される自律昇降型海洋観測機器への波浪計の設置により、台風直下等、波浪海洋混合が重要となる状況において波浪・海洋結合観測を行うことを目指して研究を遂行している。長期間の観測実現の鍵となるのは、小型化と省電力化であることを前年度までの情報収集並びに研究を通じて明らかにした。今年度は引き続き、IoT技術の発達に伴い低価格・高精度化が飛躍的に進む各種小型マイコンならびに慣性計測装置(IMU)の性能検証を行った。研究を続ける中で同様にIMUを用いた波浪計測機器の開発が、世界的に進んでいることが分かり、オーストラリアとノルウェーの研究者と詳細な意見交換を行った。その結果、本研究で開発している小型波浪計測機器は、単体としての利用も魅力であり、安価で小型な投棄型の波浪計(eXpendable Wave Gauge)の実現への第一歩としても考えることができることが明らかとなった。波浪海洋混合が重要となる状況に対して効果的な測器であるWATの開発を続ける一方で、当初の目的から派生した研究テーマとして、XWGの開発と実証を進めることで、最新の情報を世界の研究者と共有することができ、WATとXWGの開発には相乗効果が期待できることがわかった。また、情報収集を続けた結果、北極海における海氷下の波浪、特に波浪混合が、海氷分布に影響を及ぼすことがわかり、波浪と海洋構造を同時に計測する潜在的なニーズが北極域にもあることが明らかとなった。北極域波浪に関する知見は限定されているため、計測の実施も含めて引き続き検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた通り波浪計測を担う慣性計測装置(IMU)に関する知見は拡充されているが、海洋観測フロートWATへの実装が遅れている。この理由の一つとして、2020年度は社会の情勢から研究室における機器開発並びに観測実験の実施が十分実施できなかったことがあげられる。それでも数少ない機会を利用して相模湾および駿河湾を中心に実海域での試験を行ってきたが、実施時の波浪は有義波高が1mに満たないなど、必ずしも理想的な波浪場での計測が実施できたわけではなく、実海域での観測による検証に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
自律昇降型海洋観測については、これまでに開発を進めているMOF(多目的観測フロート)での表層波浪計測+水温・塩分プロファイル結合計測を実現する。より具体的には、相模湾等で水深500m以下の海域において係留系を設置し、係留策に沿ったフロートの昇降を繰り返し得られたデータ解析ならびに機器の検査を行うことで問題点の抽出と頑健性の向上を図る。また、海洋観測フロートの小型模型を作成し、IMUを搭載し、造波水槽を用いて、海面下での波浪計測試験を行い、海面下のフロートの動揺に基づいた波浪の計測手法について検討を行う。以上の成果を踏まえて実海域への投入を行うことを今後の研究の推進の基本方針とする。 また、廉価な慣性計測装置を用いた小型高性能波浪計の開発は世界的に進んでいる一方で、いまだ、製品として完成されていないことが明らかとなった。そのため、本研究で開発している波浪センサーの実海域での実証はXWGの開発という文脈でも重要かつ効果的と考えられる。特に、多点での波浪計測が可能となれば、波面の三次元的な形状を捉えることに向けて大きく前進し、新たな科学的な知見が得られる可能性が高い。この実現に向けた課題は、上記の慣性計測装置が頑健に動作すること並びに、適切な浮体の設計である。また、多点計測は10km程度でも海面の様子が大きく変化する極域に代表される氷縁域と呼ばれる状況下でも大いに効果的と考えられる。本研究室は、文科省ArCSII北極域研究加速プロジェクトにおける北極観測に参画しており、また、第63次南極地域観測隊夏隊にも参加予定である。このような機会を利用し、XWGを多数展開することで波浪計測の実績を積むみことを検討する。
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Causes of Carryover |
自律昇降型海洋観測フロート(MOF:多目的観測フロート)への波浪計の設置が遅れ、MOFの購入を行わなかったため、次年度使用額が生じた。まず、プロトタイプでの開発を継続し、実装が完了した時点で、複数基(600万程度)購入し、実海域に展開する必要がある。また、今年度十分実施できなかった、実海域実証試験を行う経費とする。特に、機器の検証を行う上では実海域に投入し、漂流観測を実施する前に、係留系の係留策を伝っての昇降を繰り返し、海洋観測と波浪観測を繰り返し実施することで、機器の頑健性を向上するための知見を得ることが重要である。この実験の実施にも費用が必要である(200万程度)。加えて、国際学会をはじめとした情報収集ならびに研究成果の公表のための論文執筆遂行に費用が必要である。以上の理由と使用計画から次年度使用額が生じている。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Observation of on-ice wind waves under grease ice in the western Arctic Ocean2021
Author(s)
Kodaira, T., Waseda, T., Nose, T., K. Sato, Inoue, J., Voermans, J., Babanin, A.
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Journal Title
Polar Science
Volume: 27
Pages: 100567
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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