2022 Fiscal Year Research-status Report
Wave phonon engineering based on monolayer NEMS functionalized using sub-nanometer ion beam
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20K20442
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90372458)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | NEMS / グラフェン / ナノイオンビーム / 熱フォノン / 熱整流素子 / ナノメッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ナノ孔エッジでのフォノン散乱とナノ孔間でのフォノン局在の影響を調べるため、従来の極小孔ナノメッシュ(円形ナノ孔の直径3 ~ 6 nm)よりも大きな正方形(□型)の孔を電子線直接描画(EB)で形成した非対称チャネル構造を採用した。Si/SiO2基板上にEBでグラフェンを長さ0.5 um、幅1.2 umの長方形チャネルに加工し、チャネル幅方向に□型孔を一列に形成した後、BHFエッチングとCO2超臨界乾燥法でチャネルを宙吊りにする作製プロセスを新たに開発した。真性グラフェン中のフォノン平均自由行程~0.775 umに対して、チャネル長を0.5 umとすることで、チャネル内のフォノン輸送が準バリスティック輸送となるように設計している。□型孔は寸法100 nm、間隔150 nmとし、チャネル中央から50 nmオフセットした位置に4個の□型孔列として形成し、非対称チャネル構造を完成した。このチャネルの両端にオーミック接続する4端子電極を作製し、独自のDifferential Thermal Leakage計測法を用いることで、同一素子を用いた電気伝導特性と熱伝導特性評価を実施した。まず、作製した全ての非対称□型孔列チャネルに対して、電圧の極性を入れ替えても電気伝導特性に非対称性はみられないことを確認した。その上で、4端子電極のヒーターと熱シンクを入れ替える方法で、熱バイアスの極性を切り替えて熱伝導特性を環境温度100 K~300 Kで評価したところ、100 Kで82%、150 Kで73%、200 Kで67%の熱整流率を得ることに成功した。200 Kより高温では熱整流作用が急激に減少し、250 Kで16%、300 Kでは消失した。この結果は、R3年度で得られたハーフナノメッシュチャネル構造、および台形型チャネル構造に対する結果と同様の温度依存性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寸法100 nmの□型孔列形成に際して、当初は前年度までと同様にヘリウムイオンビームミリング(HIBM)技術を用いて宙吊りグラフェン上に直接加工するプロセスを検討したが、宙吊りチャネルが破断する問題が発生した。これはヘリウムイオンビーム照射時間が増加し、チャネル全体へのダメージが増大するためだと考えられる。そのため本年度は、素子作製方法を電子線直接描画とRIEによる孔形成プロセスに切り替えた。しかし、このプロセスの場合、グラフェン両持ち梁を宙吊りにする工程が□型孔列形成の後になり、BHFエッチングと洗浄時の溶液表面張力によるグラフェン梁損傷の問題が大きくなる。これを回避するため、①グラフェンチャネルを幅広(W~1.2 um)で短い(L~500 nm)構造とし、②さらにナノ孔間隔を150 nm、チャネルエッジから□型孔列までのオフセットを約200 nmに設計することで、ナノ孔列形成後も一定の梁強度を保つことができ、素子の安定的作製に成功した。 一方で、チャネル長を500 nmと短くしたため、□型孔列の位置を電極端からチャネル中央まで段階的にシフトさせた構造を作製して、構造の非対称度と熱整流率との相関を調べることはできなかった。これは次年度の課題である。また、同じ理由により、宙吊りグラフェンチャネルに対して基板電極からの引張応力を印加できず熱伝導度の変調実現には至らなかった。しかし、別に試作したナノ孔形成無しの宙吊り単層グラフェンチャネル構造(チャネル長L~1 um、幅W~500 nm)では、チャネル上部に設けたブリッジ型トップゲートによる電圧印加でチャネルのアクチュエーション動作に成功している。この技術を基盤として、次年度は3端子型の熱整流素子実現とチャネルの機械的変位と熱整流作用の相関解明に挑む。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノフォノニック構造の開発においては、R4年度で構築したEBによるナノ孔列形成技術により、ナノ孔の形状(長方形、三角形)と配置(1列、2列スタガード配置、列のオフセット距離)を変化させた様々な非対称チャネル素子を作製する。特に、チャネル方向にナノ孔寸法を長くした長方形孔列構造では、隣接する孔間の熱フォノン局在度の変化に着目して構造を設計する。ヘリウムイオンビームミリングによるナノメッシュ形成では、チャネル長に対するナノメッシュ長の比を10 %~50%と変化させたによる非対称ナノメッシュ素子を作製する。また、R3年度で検討した台形型チャネルと、非対称ナノ孔列を組み合わせた複合構造による熱整流作用増大についても検討する。これらの素子における熱整流率を統合的に解析し、構造非対称性と熱整流作用の相関を明らかにする。いずれの素子構造においても、グラフェンのフォノン平均自由行程MFP~775 nmに対して、チャネル長L>MFP、L<MFPの構造を作製し、波動性(弾道)熱フォノンの寄与を評価する。 熱整流現象のメカニズム解明においては、原子スケールでナノ形状(エッジおよびナノ孔)を考慮した非平衡分子動力学(NEMD)シミュレーションを実施する。ナノ孔の寸法・形状・配置を変化させ、局所フォノン状態密度とチャネル内温度分布の変化を解析することで、非平衡熱フォノン分布が熱整流現象に与える影響を解明する。3端子化による新奇熱機能素子の開発においては、局所ボトムゲートあるいはブリッジ型トップゲートを設けたチャネル長L > 1 umの非対称チャネル素子を作製し、チャネルのアクチュエーション動作に伴う熱伝導特性の変調を評価する。
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Research Products
(18 results)