2019 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis of Hexasilabenzene
Project/Area Number |
19H05528
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ヘキサシラベンゼン / ケイ素 / ベンゼン / 芳香族化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘキサシラベンゼンはベンゼンの6個の炭素原子すべてをケイ素原子で置き換えた化合物であり、その構造的な美しさだけでなく、近年注目度の高いグラフェンのケイ素類縁体である「シリセン」の基本構造であるという科学的な重要性も相まって多くの化学者を惹きつけてきた。いわば典型元素化学における「夢化合物」の一つであり、その合成を指向した研究は枚挙にいとまがない。しかし未だ計算科学の域を出ない化合物であり、その合成は達成されていない。本研究では、これまでのヘキサシラベンゼン合成検討における問題点を抽出しそれらを克服する方法を考案し、その新たな合成経路、分子設計に基づいてヘキサシラベンゼンの合成を目指す。 既に代表者らは、環構成ケイ素原子上に塩素またはメトキシ基を12個有するケイ素六員環化合物(ヘキサシラシクロヘキサン類)の効率的な合成を達成しており、合成したヘキサシラシクロヘキサン類に対し、立体保護基を導入する試みを行った。その結果、ケイ素―ケイ素結合切断が優先的に進行し、立体保護基導入が非常に困難であることが分かった。この実験的事実をもとに、次にケイ素上に予め立体保護基を導入したケイ素源を用いて、ヘキサシラベンゼンの前駆体となるヘキサシラシクロヘキサン類の合成に取り組んだ。その結果、六員環・五員環・四員環ケイ素化合物がそれぞれ立体異性体の混合物として単離でき、分離精製の後それらを構造的・分光学的に同定することに成功した。特に、アリール基が4-メトキシフェニル基の場合では、定量的な官能基変換反応が可能であり、ヘキサシラベンゼン合成における良い前駆体になりうることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画においては、ヘキサシラシクロヘキサン類への立体保護基導入によってヘキサシラベンゼン前駆体を合成する予定であった。しかし、様々な条件検討の結果、ケイ素六員環骨格を保持した形での立体保護基導入が困難であることが明らかになった。そこで、速度論的安定化に必要な立体保護基および、後に活性な置換基へと変換可能なアリール基をケイ素上に予め導入したケイ素単核ユニットを用いることによって、目的の立体保護基を有する環状オリゴシラン類の合成に成功した。また、得られた化合物のアリール基を定量的に活性なハロゲノ基へと変換することにも成功した。今回得られた環状オリゴシラン類は、ヘキサシラベンゼンを合成する上での有用な中間体として利用可能であると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた環状オリゴシラン類に対して、各種金属還元剤を作用させることで、ヘキサシラベンゼンの合成に取り組む。また、環サイズの異なる環状オリゴシラン類は新たなケイ素クラスターや新規な含ケイ素芳香族化合物を含む不飽和結合化学種への誘導が可能であると考えられるため、その反応性や置換基変換能の解明にも取り組む予定である。
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[Presentation] Synthetic Studies of 1-Germaazulene2019
Author(s)
T. Oshiro, Y. Mizuhata, N. Tokitoh
Organizer
The 16th International Conference on the Coordination and Organometallic Chemistry of Germanium, Tin, and Lead (ICCOC-GTL 2019), Saitama, Japan
Int'l Joint Research
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