2021 Fiscal Year Research-status Report
Synthesis of Hexasilabenzene
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20K20447
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘキサシラベンゼン / ケイ素 / ベンゼン / 芳香族化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
一方のケイ素上のみにかさ高い置換基(R)を有する非対称置換ハロジシランの還元は、縮合反応による多量化(クラスター化)を許容する一方で、生成物に対する速度論的安定化が期待でき、多様な不飽和ケイ素クラスター形成につながると考えている。前年度までに、種々の置換様式を有するハロジシランの合成に成功し、還元的縮合反応を検討した。その中で、ペンタブロモジシランの還元により種々の新規な不飽和ケイ素クラスター群が形成することを見いだした。中でも[Si6R3]-の組成を持つ五角錐型クラスターにおいては、理論、実験両面における考察から、複数のσ結合とπ結合からなる6電子が非局在化した3次元芳香族性の発現が示唆されるなど、特異な電子構造を有していることが明らかとなった。また二つの3員環が連結した構造を有するヘキサシラベンゼン(Si6R6)の異性体の生成も確認している。 今年度はさらにトリシラン前駆体やケイ素・ゲルマニウム混合前駆体を設計・合成し、その還元反応を検討した。トリシラン前駆体の還元では、直鎖ヘキサシランが生成することを明らかにした。ケイ素・ゲルマニウム混合系では現在までのところ、その生成物の構造を確定するには至っていないが、ジシランの系と類似した構造を有していることが示唆されている。 またこれまでに得られているクラスター群の反応性の検証も行った。いくつかの系では選択的な反応が進行することを見出しており、現在その生成物の構造決定を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘキサシラベンゼンの異性体(Si6R6)を含む、非対称ジシランの還元反応における生成物は、これまでに例のない構造、電子状態を有するものであり、また[Si6R3]-クラスターは芳香族化合物と評価可能な物性を有していることを明らかにした。この知見は、ケイ素芳香族化合物の進展に大きく寄与するものと考えている。しかし、前駆体骨格における元素変換や鎖長変更の試みは反応の選択性および生成物の結晶性の低下の結果となり、生成物の構造決定が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
一連の前駆体の還元条件および再結晶条件を精査し、生成物の構造決定を急ぐ。また既に得られているクラスター群に関しては、その反応性(熱反応、求電子剤との反応、酸化反応)を広範に検証する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響から、成果発表のための国際・国内会議が全てオンラインとなり、旅費がほとんど発生しなかった。また機器刷新に伴って、予定していた定期メンテナンス費用がなくなり、その他項目の支出が減っている。新たに合成に成功した化合物群の物性測定のために、特殊ガラス器具を導入する必要が生じたため、その購入費用に充てる計画である。
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