2021 Fiscal Year Research-status Report
βグルカンによるDNA2重らせんの裂開メカニズムなど:化学的量子状態間の転移挙動
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20K20449
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
櫻井 和朗 北九州市立大学, 環境技術研究所, 教授 (70343431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化学的量子状態 / 多糖核酸複合体 / 小角X線散乱 / プラトニックミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は天然の糖類の一種であるβ1,3グルカン(以下SPG)とDNAが全く新しいタイプの高分子複合体を形成することを発見し、DDSへの応用研究を医学研究者や企業と進めてた。その成果は、感染症ワクチンの効果を高める補助剤のアジュバントの開発が進んでいる。 本年度は、分子量(分子の長さ)が低く制御されたSPGを使って複合体を作ると、DNAがSPGの中から複合体を作るに最適な長さの分子だけを選び出して、低分子化合物のような分布のない複合体を作ることが分かった。これまでにDNAを1本と2本含む複合体を単離して詳細に解析し論文化を進めている。我々はこの複合体を従来の分布が広い多糖核酸複合体と区別する意味で、量子化多糖核酸複合体(qSDC)と呼んでいる。これはDNAの本数で複合体が量子化されているからである。 qSDCは単分散で小さなタンパク質程度の分子量をもつ中分子医薬のようである。 このqSDCからなる複合体を用いて、核酸医薬の細胞への導入試験をしたところ飛躍的に高い効果を示した。qSDCの活性が高い理由は不明であり、細胞取り込み、エンドソームからの脱出などを、細胞内動態を蛍光顕微鏡観察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多糖核酸複合体:2量体の散乱関数が従来知られていたwormlike chainモデルで記述することが難しいと分かったので、新しい理論を構築した。それは、自由回転できる結合部分を持つ2本の棒からなり、その自由回転部分の角度を制限するものである。これにより、散乱挙動をかなり正確に説明することが可能となった。
他の化学的量子状態の発見:アクリル酸の重合において、ある特殊な溶媒で沈殿重合を行うと、単分散に極めて近い粒状の粒子が得られることが判明した。この動力学に関してスプリング8の放射光を用いて検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
プラトニックミセル:今まで合成してきたカリクサレン以外の脂質の中で、特に、天然の環状ペプチドからなるサーファクチンが同様のプラトニックミセルの性質を示すので、この化合物に関して、系の性質を詳細に調べる予定である。
多糖核酸複合体:多糖核酸複合体が形成される2つの過程に関して、時間分解放射光X線散乱法と時間分解円偏向2色性測定を用いて解明する。また、この変化は極めて遅いので、形成過程を多角度光散乱光度計や動的光散乱計と組合したゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)の溶出曲線でも追跡できるか試みる。
アクリル酸重合体:単分散の粒子が形成される過程を詳細に検討し、そのメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、実験等に使用する資材・試料・資料の入手が困難であったため、翌年度に購入する。また、プラトニックミセルの形状を評価する重要な手段である、大型放射光施設SPring-8での実験も必要最小限度にしたため、引き続き翌年度に実行するもの。
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