2022 Fiscal Year Research-status Report
βグルカンによるDNA2重らせんの裂開メカニズムなど:化学的量子状態間の転移挙動
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20K20449
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
櫻井 和朗 北九州市立大学, 環境技術研究所, 教授 (70343431)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 化学的量状態 / 多糖核酸複合体 / 小角X線散乱 / プラトニックミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、化学的量子状態間の転移に関する理論と実験の進展を目指すものであった。具体的には、外部要素の変化によって状態Aから状態Bに変化する化学状態の転移を詳細に観察し、そのダイナミクスを理論的に解明することを目指した。本研究では、プラトニックミセルと多糖核酸複合体系を対象とし、これらの化学的量子状態間の転移を詳細に調査した。プラトニックミセルの形成ダイナミクスについては、時間分解放射光X線散乱法を用いて詳細に調査し、ミセル形成の時間依存性を明らかにした。 また、塩濃度や温度の変化による影響も観察した。さらには、ミセルの形成過程に関する理論モデルを構築し、ユニマー交換やミセル融合を考慮に入れた動力学モデルを提案した。一方、多糖核酸複合体系についても同様の方法で調査を行い、DNAの2重鎖の鎖交換反応を中心に観察した。その結果、DNAの塩基数に応じて結合する多糖の長さが存在することを発見した。 さらに、アクリル酸のラジカル重合において、特殊な溶媒で沈殿重合を行うと、極めて分布がせまい粒子が形成することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)プラトニックミセルの形成ダイナミクスに関する研究:初年度では、プラトニックミセル形成過程における動的挙動の解明に注力した。まず、時間分解放射光X線散乱法を用いて、形成過程の速度論的特性を明らかにした。さらに、高分子ミセルの形状とサイズを制御するための新たな理論モデルを構築し、それを用いてミセル形成のダイナミクスを詳細に解析した。その結果、ミセル形成における速度論的要素と分子レベルでの物質移動の関係が明確になった。 2)多糖核酸複合体系の研究:DNAと多糖の相互作用について詳細な研究を行った。具体的には、DNAと多糖との間の結合特性、特に塩基数や多糖の長さが複合体形成にどのように影響するのかを明らかにした。また、DNAの2重らせんを裂開する現象や、βグルカン3重らせんの1本がDNAに置き換わる過程を観察し、それらの過程が生物学的な機能を果たす可能性について新たな知見を得た。 3)DNAの2重鎖の鎖交換反応の研究:DNAの2重鎖の鎖交換反応に関する研究も行った。特に時間分解放射光X線散乱法を用いて、鎖交換反応のダイナミクスを詳細に解析した。それにより、非線形性についての新たな理解を得ることができた。また、自由エネルギーのランドスケープの面に上がる過程が律速となっている可能性について初めて報告した。 4)単分散アクリル酸粒子の形成:申請時には未発見であった、単分散なアクリル酸粒子の形成過程に関して、放射光X線を用いて詳細に検討した。 これらの成果は化学的量子状態間の転移についての理解を深めるための重要な一歩となる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAと多糖の結合特性について深掘りし、塩基数や多糖の長さが複合体形成にどのように影響するのかを明らかにする。具体的には、DNAの2重らせんを裂開する現象や、βグルカン3重らせんの1本がDNAに置き換わる過程を詳細に観察し、新たな知見を得る。さらに、DNAの2重鎖の鎖交換反応の研究を進展させる。時間分解放射光X線散乱法を用いてダイナミクスを研究し、これまでに報告されている非線形性についてさらに解明する。また、自由エネルギーのランドスケープの面に上がる過程が律速となっている可能性について検証する。
以上の課題に対して、それぞれの課題ごとに深掘りするとともに、全体として化学的量子状態間の転移についての理解を深めることを目指す。
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Causes of Carryover |
補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施のため。主に国際学会にて研究成果発表および論文投稿のため。
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Research Products
(23 results)