2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H05537
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
秋山 康紀 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20285307)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / ストリゴラクトン / 菌根菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
非典型的ストリゴラクトンアナログを新規合成し、複数のAM菌を同時接種したミヤコグサ根に投与し、これらのアナログがミヤコグサ菌根におけるAM菌叢組成を改変する効果を示すかを調べた。ベンズアルデヒドを出発物質として,vinyl iodideとのStilleカップリングを含む3段階の反応を経てA環にベンゼン環を持つカーラクトン酸メチルアナログを合成した。同様に、A環のパラ位にブロモ基、クロロ基、メチル基がそれぞれ置換したアナログも合成した。これら4つのアナログについてAM菌Gigaspora margaritaに対する菌糸分岐誘導活性をペーパーディスクアッセイにより評価したところ、最小有効濃度は1 pg/disc~10 pg/discであり、いずれも既知の天然の非典型的SLよりも強い活性を示した。次に、ミヤコグサ (Lotus japonicus) 発芽種子を3種類のAM菌Rhizophagus irregularis、R. clarus、G. margaritaを含む培土に定植し、非典型的ストリゴラクトンアナログを1 μM含む1/2 ホーグランド液 (0.1 mM Pi) を与えて4週間生育させた。その後、根におけるAM菌の感染率の測定とAM菌種特異的プライマーを用いた定量PCRによる菌叢組成解析を行ったところ、統計的な有意性は出なかったが、非典型的ストリゴラクトンアナログを投与することによって、AM菌の感染率が減少する一方で、菌叢組成ではR. irregularis属2菌株の割合が減少し、G. margaritaの割合が増加する傾向が見られた。この結果から、A環にベンゼン環を持つカーラクトン酸メチルアナログはAM菌叢組成を改変できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回合成したA環にベンゼン環を持つカーラクトン酸メチルアナログについてAM菌叢組成を改変できる可能性を見出すことができたのは大きな発見である。AM菌の接種時の不均一性から、実験区ごとの各AM菌の存在量のばらつきが大きく、統計的有意性は得られなかったが、今後、このばらつきを改善できれば、明確なAM菌叢組成改変効果が観察できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに構造多様性に富んだ様々なストリゴラクトンアナログを合成していくことにより、個々の種のAM菌を特異的に活性化できるアナログの開発を目指す。また、ストリゴラクトン生合成欠損変異体を用いた菌根菌叢形成におけるストリゴラクトン調節機構の解析も進めていく。ミヤコグサは典型的ストリゴラクトンである5-デオキシストリゴールと非典型的ストリゴラクトンであるロータスラクトンを生産分泌する。これまでに我々はミヤコグサ内在性レトロトランスポゾンLORE1タグラインから、5-デオキシストリゴールとロータスラクトンの両方、あるいはどちらか片方を欠損した3種の生合成変異体を単離している。これらの変異体に既知のAM菌を単独あるいは複数種を混合して接種し、経時的に根および培土をサンプリングし、根内や根外のAM菌の存在量および代謝活性を個々のAM菌のLSUをターゲットとした定量PCRで測定し、野生型と比較することで菌根菌叢の菌種組成に対する典型的・非典型的ストリゴラクトンの寄与を解析する。
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