2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H05548
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
林 茂生 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (60183092)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩根 敦子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, ユニットリーダー (30252638)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 細胞外基質 / ショウジョウバエ / 細胞膜交通 / 電子顕微鏡 / FIB-SEM |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の嗅覚器官の表層は細胞外基質のクチクラ層に覆われる。本研究では細胞外基質上に規則的に配列する口径50-200nmの穴( ナノポア)の形成機構を追求した。まずRNAseq法によりナノポアを有する嗅覚器官に多く発現する遺伝子の中からショウジョウバエのナノポアの形成に関わることが予想される候補遺伝子を絞り込み、RNAi法による遺伝子機能阻害と、走査型ヘリウムイオン顕微鏡による外部形態観察によりナノポア形成に及ぼす効果を検定した。その結果38個の候補遺伝子の阻害実験で5個の遺伝子でナノポアの形態、数、配列に異常が見いだされた。これらの遺伝子は同じスクリーニングの中ですでに同定していたナノポア形成に必須な遺伝子gore-tex/osiris23と共にナノポアの形成を制御することが予想された。
嗅覚器官のナノポアはtrichogen細胞が分泌する嗅覚感覚毛のクチクラのみで形成される。ナノポア形成に関わる嗅覚感覚毛特有のクチクラ形成プロセスの存在が予想されていた。またgore-tex/osiris23は細胞内膜構造に局在する分子をコードしているため、クチクラ分泌の時期での嗅覚感覚毛細胞内の膜交通システムの超微細形態分析が必要となった。そこで電子顕微鏡標本のブロックをレーザー光で連続切削し高精細の構造観察を可能とするFIB-SEM (focused ion beam-scanning electron microscope)を用いて三次元構造解析を行った。その結果、この時期の嗅覚感覚毛細胞内には特徴的な小胞体ネットワークが存在する事が明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNAi法による遺伝子機能阻害と、走査型ヘリウムイオン顕微鏡による外部形態観察によりナノポア形成に及ぼす効果を検定し結果、38個の候補遺伝子の阻害実験で5個の遺伝子でナノポアの形態、数、配列に異常が見いだされた。これらの遺伝子には脂質合成に関わるwaterproof遺伝子が含まれる。過去の報告ではナノポアの底部を充填し、匂い分子を神経末端に伝達する脂質性のpore tubuleの存在が指摘されている。waterproof遺伝子はpore tubuleの形成を支える事でナノポア形成を支えているという可能性が示唆された。スクリーニングの中ですでに同定していたナノポア形成に必須な遺伝子gore-tex/osiris23と共にナノポアの形成を制御する遺伝子群が同定されたことでクチクラの微細構造形成の経路を研究する準備が整ったと考えている。
FIB-SEMによる細胞内膜系の解析により嗅覚毛の中には他の細胞にはみられない巨大な管状の膜ネットワークが存在する事が見いだされた。構造上の類似性からこれは鱗翅目の鱗粉細胞内に見いだされていた小胞体ネットワークに相当するものと推定された。鱗粉細胞はクチクラに複雑な網目構造が形成されナノクリスタルと呼ばれる構造の形成が光の選択的吸収と構造色の精製に働いていると考えられている。小胞体ネットワークはgyroidと呼ばれる構造をとってナノクリスタル構造の鋳型となる事が提案されている。嗅覚毛における小胞体ネットワークがナノポアの鋳型になり得るのか、他の内膜系との関係はどうなっているのか、gore-tex/osiris23遺伝子の作用点はどこにあるかなどの興味深い研究課題が提示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
RNAiスクリーンで同定された5個のナノポア形成遺伝子の候補について研究を進める。他のRNAiやCRISPR/Cas9などの手法を用いてノックアウト実験を行い表現型出現の確認を行う。その上で確定した遺伝子についてゲノム工学を用いた変異体誘導、ノックイン法を用いてGFPなどを組み込んで発現解析などを行い、これら遺伝子のナノポア形成における役割を明らかにする、更にこれら遺伝子間の相互作用を検討する事でナノポア形成に足る遺伝子ネットワークを解明したい。 FIB-SEMに関してはえられた連続切片像を元に細胞内膜系の3次元再構築を行う事で特徴的小胞体構造の詳細を明らかにする。さらに機械学習を用いた形態認識技術を導入し、画像解析の作業工程のスピードアップと信頼度の向上を目指す。この小胞体構造の形態的特徴を定量的に分析し、時間的変化、およびgore-tex/osiris23変異体における変化を明らかにして細胞内膜系の構造とナノポア形成との関係を追求する。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Nanopore formation in the cuticle of the insect olfactory sensillum2019
Author(s)
Shigeo Hayashi, Toshiya Ando, Sayaka Sekine, Sachi Inagaki, Kazuyo Misaki, Laurent Badel, Hiroyuki Moriya, Mustafa Sami, Takahiro Chihara, Hokuto Kazama, Shigenobu Yonemura
Organizer
Annual Meeting of Japan Society for Deveopmental Biologists
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-
-