2019 Fiscal Year Annual Research Report
CAR-T細胞療法の最適化に資するCAR機能チューニングテクノロジーの開発
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19H05552
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 直貴 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (90312123)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | キメラ抗原受容体 / 構造活性相関 / 細胞療法 / 腫瘍免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
キメラ抗原受容体 (CAR) は任意の抗原に対してT細胞の活性化を惹起できる人工受容体であり、その構造に免疫機能分子由来の細胞内シグナル伝達領域 (STD) を導入することでT細胞の機能を自在に制御できる可能性がある。これまでの解析からT細胞での安定な発現が認められた第一世代CAR (抗原認識領域-CD28由来ヒンジ/膜貫通領域-CD3ζ由来STD) を基本構造として、各種共刺激分子由来STDを2nd STDとして挿入した第二世代CARを構築した。CD28ファミリー分子由来のSTDを挿入した第二世代CAR-T細胞は、第一世代CAR-T細胞と比較してIL-2分泌能と細胞傷害活性に増強が認められた。一方、TNF受容体スーパーファミリー分子由来のSTDを挿入した第二世代CAR-T細胞のサイトカイン分泌能・細胞傷害活性は減弱傾向を示した。CAR-T細胞の抗原特異性・反応性はCAR細胞外領域のscFvに規定されるものの、scFvの構造最適化に関する基礎情報は未だ乏しい。そこで、scFv構造の改変がT細胞膜上におけるCARの発現強度や抗原親和性、およびCAR-T細胞機能に及ぼす影響について精査した。同一抗原を認識する種々のscFv cloneを用いて構築したCARの中には、T細胞膜上に発現して抗原特異的結合能を有する構造体を含んだが、T細胞膜上に発現するものの抗原結合親和性が非常に乏しい構造体や、膜への発現効率が低く細胞内での凝集が認められる構造体が存在した。CARのscFv構造改変を種々試みたところ、CDR-graftingは難発現性を示したCARの膜発現効率を著しく改善させることが可能であり、CAR-T細胞療法への応用に有望なscFvを取得したとしてもCARとしてT細胞膜上に発現させることができずに開発を断念してきたケースへの打開策になりうると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究実施計画のうち、「シグナル伝達領域を改変した各種CARの構造活性相関解析」についてはほぼ達成することができた。「ヒンジ・細胞膜貫通領域を改変した各種CARの構造活性相関解析」については、一部未達の検討項目が残されており、次年度に継続して解析を進める。一方、当初の計画にはなかった「抗原認識領域を改変した各種CARの構造活性相関解析」について新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
各種構造改変CARを新たに作出し、ヒンジ領域の長さや立体構造、ヒンジ領域内のシステイン残基やN-結合型・O-結合型糖鎖修飾サイト、などがCAR発現様式やCAR-T細胞機能 (細胞傷害活性、サイトカイン分泌能、など) に与える影響を精査する。また共刺激分子に由来するSTDを2nd-STDとして追加した種々の第二世代CARについて、それらを発現させたT細胞を持続的に抗原刺激した際の生存性および疲弊化について解析する。さらに、CARへの2nd STDの追加挿入とCAR-T細胞の機能増強・抑制との因果関係を明らかにすべく、各2nd STDのアダプター分子結合領域をアミノ酸置換したCAR改変体を作製し、それぞれを発現させたCAR-T細胞の1st STD (CD3ζ由来STD) および2nd STDのシグナル伝達活性と細胞機能との連関について詳細な解析を行う。
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