2019 Fiscal Year Annual Research Report
細胞治療を指向した機能性エクソソーム分泌細胞内包ゲルの開発
Project/Area Number |
19H05553
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中瀬 生彦 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40432322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩原 将也 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (00705056)
上田 真史 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (40381967)
児玉 栄一 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (50271151)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞分泌小胞 / エクソソーム / 薬物送達 / 細胞治療 / ゲル内包細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞分泌小胞であるエクソソーム(直径が約30-200 nm)は、生体を構成するほとんど全ての細胞から分泌され、血液や尿などの体液中に大量に含まれる。エクソソームの内部には、microRNAや酵素等の生理活性分子が内包され、分泌されたエクソソームは、周辺の細胞によって取り込まれ、エクソソーム内包分子によって細胞機能に影響を与える。加えてエクソソームは、薬物送達における観点(免疫制御、細胞機能制御分子の天然・人工内包、膜タンパク質の精密構築、血液脳関門の通過等)において高い優位性を有し、次世代型の薬物運搬体として大きく期待されている。一方で、繰り返し投与の必要性やエクソソーム単離効率の低さといった問題点は未解決のままである。本研究課題では、細胞特異的に薬剤送達が可能な機能性エクソソームを分泌可能な細胞内包ゲルシステムの確立を目的とする。研究開発目的として、治療や診断に役立つ機能性エクソソームを分泌する細胞をゲルに内包することで、エクソソームのみがゲルから分泌されるシステムであり、本技術を基盤とした細胞治療法の構築を目指す。令和元年度において、アガロースゲルを用いて、エクソソームは通過するが、その母細胞は通過できないように内包した細胞封入体を作製し、その細胞保持能やエクソソーム分泌性、周辺細胞へのエクソソーム移行性等を中心に詳細な検討を行なった。詳細を「現在までの進捗状況」に示すが、ゲル内包細胞の比較的高い細胞生存率、及び、細胞内包ゲルからの性状を維持したエクソソーム分泌と、分泌後に周辺のがん細胞にエクソソームが効果的に取り込まれることを確認した。今後、細胞治療に向けた基盤技術のさらなる最適化が必要だが、現段階において根幹となる手法構築の確立に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題1:エクソソーム分泌細胞のゲル内包技術の最適化 課題2:細胞内包ゲルからのエクソソーム分泌確認と分泌エクソソームの細胞内移行評価 細胞内包ゲルは、エクソソームマーカータンパク質CD63-緑色蛍光タンパク質GFP融合配列を安定発現するCD63-GFP HeLa細胞を用いて作製した。分泌されるエクソソームにはGFPが内包されており、その動態を可視化できる。足場材料コラーゲンと混合したCD63-GFP HeLa 細胞を最適化濃度のアガロースの枠に封入し、細胞内包ゲルを作製した。作製したゲルの断面を蛍光顕微鏡で観察した結果、安定発現するCD63-GFP HeLa細胞がゲルに内包されたことが確認された。ゲル中における生細胞の割合を、PI染色法を用いて計測したところ、約80%以上の細胞生存率が確認され、コントロール実験との比較からアガロースによる細胞死誘導が殆ど起こらないことが示唆された。さらに細胞内包ゲルから分泌されるエクソソームを、超遠心法により単離した。単離エクソソームとして直径約30~100 nmの粒子が検出され、エクソソーム特有の負電荷を示した。加えて透過型電子顕微鏡観察より、球形のエクソソーム形態が確認された。以上の結果から、作製した細胞内包ゲルからは、ゲルによる分子篩の結果、通常の培養細胞からの場合と比較して粒径の小さいエクソソームが分泌されていることが示された。またCD63-GFP HeLa 細胞内包ゲルをヒト類表皮がん由来A431細胞と48時間共培養し、共焦点レーザー顕微鏡を用いて検討した結果、分泌エクソソームがA431細胞内に移行し、CD63-GFP由来の蛍光シグナルが観察された。以上のように、当初の計画以上に研究が進展し、細胞内包ゲルの作製、及び、ゲルから分泌されたエクソソームが周辺細胞に効果的に取り込まれるといった基盤技術の構築に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に引き続き、課題1:エクソソーム分泌細胞のゲル内包技術の最適化、及び、課題2:細胞内包ゲルからのエクソソーム分泌確認と分泌エクソソームの細胞内移行評価に加えて、申請書の研究課題3を中心に研究展開する。 <研究課題3:動物へのエクソソーム分泌細胞内包ゲルの移植と分泌エクソソームの体内動態・組織移行の評価> 「研究課題1」と「研究課題2」で最適化されたエクソソーム分泌細胞内包ゲルに関して、動物(担がんヌードマウス、ラット等)に移植を行い、移植された細胞内包ゲルからの近赤外蛍光タンパク質(例えばCD63-iRFP [Nature Biotechnol (2011)])内包エクソソームの動物体内分布、及び、各臓器組織への移行性をin vivo蛍光イメージングで評価する。細胞内包ゲルの動物移植は、足場ゲルを用いたがん細胞の移植技術と同じ手法を用いて実験を行い、結果に応じた実験の最適化を進める。具体的な研究内容として、担がんヌードマウス、ラット等への細胞内包ゲル(近赤外蛍光タンパク質内包エクソソームを分泌)を移植、経時的な動物体内分布をin vivo蛍光イメージングで評価、組織切片も作製して、エクソソームの詳細な組織移行性を検討する。本研究では進展に従って、分泌されるエクソソーム膜表面に、がん受容体標的リガンド(例えば、がん受容体の上皮成長因子受容体(EGFR)のリガンド(EGF))を遺伝子工学で安定的に発現させることで、細胞内包ゲルから分泌されたエクソソームが、がん受容体依存的に細胞内へ移行する技術開発も進める。
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[Journal Article] Pyrimidine Analogues as a New Class of Gram-Positive Antibiotics, Mainly Targeting Thymineless-Death Related Proteins.2020
Author(s)
Chihiro Oe, Hironori Hayashi, Kazushige Hirata, Kumi Kawaji, Fusako Hashima, Mina Sasano,Maaya Furuichi, Emiko Usui, Makoto Katsumi, Yasuhiko Suzuki, Chie Nakajima, Mitsuo Kaku, Eiichi N. Kodama
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Journal Title
ACS Infectious Diseases
Volume: -
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Synthetic biology based construction of biological activity-related library of fungal decalin-containing diterpenoid pyrones2020
Author(s)
Kento Tsukada, Shono Shinki, Akiho Kaneko, Kazuma Murakami, Kazuhiro Irie, Masatoshi Murai, Hideto Miyoshi, Shingo Dan, Kumi Kawaji, Hironori Hayashi, Eiichi N. Kodama, Aki Hori, Emil Salim, Takayuki Kuraishi, Naoya Hirata, Yasunari Kanda & Teigo Asai
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 11
Pages: 1830
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] エクソソーム形成分泌及び細胞内移行におけるpH培養環境変化の影響2019
Author(s)
植野菜摘, 松沢美恵, 野口公輔, 竹中智哉, 杉山綾香, ベイリー小林菜穂子, 橋本拓弥, 中瀬朋夏, 弓場英司, 藤井郁雄, 二木史朗, 吉田 徹彦, 中瀬生彦
Organizer
日本膜学会 第41回年会
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