2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive genomic and epigenomic profiling of the adipocytic trans-differentiation of osteosarcoma by transcriptional reprogramming
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19H05566
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
山田 哲司 東京医科大学, 医学部, 客員教授 (30221659)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 遺伝子転写 / がん幹細胞 / 分化転換 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
骨肉腫(Osteosarcoma)は、学童~青年期を中心に人口100万人あたり2-3人が発症する希少がんだが、原発性骨悪性腫瘍の中では最も頻度が高い。集学的治療の発達により、四肢に限局する骨肉腫の治療成績は改善してきているものの、転移のある症例は未だ難治で、5年生存率は20%-30%にとどまり(Meazza et al., Expert Rev Anticancer Ther., 16:543, 2016)、アンメットニーズがある。
我々は最近、大腸がんのWntシグナルの抑制を目的として開発したTRAF2 and NCK-interacting protein kinase (TNIK)阻害化合物NCB-0846 (Masuda et al., Nature Commun., 7:12586, 2016)に、骨肉腫細胞が非常に高い感受性を示すことを偶然見出した。NCB-0846は、Wntシグナル経路の標的遺伝子であるMYC (c-myc)以外にも、SOX2、NANOG、OCT4などの幹細胞の未分化性保持に必須な転写因子の発現を広範に抑制するとともに、脂肪細胞分化誘導関連の転写因子であるPPARγ (Peroxisome Proliferator-Activated Receptor γ)やFABP4 (Fatty Acid Binding Protein 4)を誘導し、骨肉腫細胞を脂肪細胞へ分化転換させていることが分かった。
本研究ではNCB-0846の作用の全体像を明らかにするため、クロマチン免疫沈降とゲノム網羅的発現解析により、NCB-0846が作用する遺伝子転写制御(エンハンサー)領域と被制御遺伝子を解明することを目的とする。骨肉腫細胞の分化誘導の分子機構を明らかにすることで、骨肉腫の治療が新たな局面に入ることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
【方法】2種類の骨肉腫由来の培養細胞(U2OSとMG63)を、DMSO(溶媒)、NCB-0846、NCB-0970の存在下で24時間培養し、全RNAを抽出した。ゲノムDNAの混入がないことを確かめ、TruSeq Stranded mRNA SamplePrep Kitを用いてシーケンスライブラリーを構築した。ライブラリーはイルミナ社のHiSeq 2500を用いてシーケンスを行った。発現変化のある遺伝子はDatabase for Annotation, Visualization, and Integrated Discovery (DAVID) Bioinformatics databaseを用いて機能・パスウエイ分類し、Gene Set Enrichment Analysis (GSEA)解析で、有意になる機能・パスウエイを抽出した。
【結果】解析対象とした27339遺伝子トランスクリプトの内、、2種類の骨肉腫由来の培養細胞に共通して、約30%の8330遺伝子の発現をNCB-0846はNCB-0970と比較して2倍以上抑制した。発現亢進と発現抑制された遺伝子群の間には明らかな機能の差異が認められ、パスウエイ解析の結果、Wntシグナルパスウエイと幹細胞の多分化性制御に関わる遺伝子群が2倍以上の発現低下を来たしていた。
【考案】NCB-0846による遺伝子発現変化はリプログラミングと呼ぶに相応しい広範なものであり、骨肉腫細胞の脂肪細胞への分化転換機構に関わるものと考えられた。パスウエイ解析の結果、Wntシグナルパスウエイに関わる遺伝子が統計学的に有意に発現抑制されており、NCB-0846による遺伝子転写制御にTNIKが関わることを裏付けられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には次世代シーケンサーも用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、ネガティブコントロールとなる立体異性体NCB-0970と比較することで、NCB-0846特異的に骨肉腫細胞で制御を受ける遺伝子群を明らかにした。その結果、NCB-0846の被制御遺伝子は全ゲノムの約30%にも及び、直接のWnt標的遺伝子の範囲を超えている可能性が考えられた。Wnt標的遺伝子の1つであるc-MYCは、細胞増殖・細胞分化・細胞死・代謝にかかわる広範な遺伝子の転写を制御する多機能な転写因子であり、その標的遺伝子は全ゲノムの10-15%にも及ぶことが知られている(Dang, Cell, 149:22, 2012)。NCB-0846はc-MYCの発現を強く抑制することが既に明らかになっており、NCB-0846の被制御遺伝子にはc-MYCの発現低下を介して2次的に転写制御を受ける遺伝子が多く含まれていることが予測される。
2020年度からは骨肉腫細胞をNCB-0846で処理して脂肪分化転換を誘導し、各種ヒストン修飾(H3K4me3、H3K27ac、H3K4me1)に特異的なモノクローナルを用いたクロマチン免疫沈降を行い、次世代シーケンサーによりNCB-0846によるNCB-0970との間で差が生じるゲノム上の遺伝子転写制御(エンハンサー)領域を同定する当初計画であったが、c-MYCとT-cell-factor-4 (TCF4)に対する抗体を用いたクロマチン免疫沈降に計画を変更する。本研究計画の変更により、NCB-0846による遺伝子転写リプログラミングの本質がより直接明らかになることが期待できる。さらに動物個体を用いた機能解析により遺伝子リプログラミングの影響の全体像を明らかにする。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Prognostic impact of ACTN4 gene copy number alteration in hormone receptor-positive, HER2-negative, node-negative invasive breast carcinoma2020
Author(s)
Sugano T, Yoshida M, Masuda M, Ono M, Tamura K, Kinoshita T, Tsuda H, Honda K, Gemma A, Yamada T
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Journal Title
Br J Cancer.
Volume: 122
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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