2020 Fiscal Year Research-status Report
骨・軟骨破壊性疾患の分子標的治療薬の創薬基盤構築を目指す骨免疫学の新機軸の創出
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20K20475
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西村 理行 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (60294112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 智彦 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50510723)
高畑 佳史 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60635845)
波多 賢二 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (80444496)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 関節軟骨 / 炎症性サイトカイン / 細胞内シグナル / 転写因子 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では未曾有の超高齢社会の進行により、歯周疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性関節症、悪性腫瘍の骨転移などの骨および軟骨組織の破壊性疾患が増加し、臨床的にも医療経済的にも社会的にも大きな問題となっている。これまでに骨吸収抑制薬、骨形成促進薬が開発されてきたが、未だこれらの疾患を完全に克服できていない。したがって、新たな観点に基づく骨、軟骨および関節疾患に対する治療薬の開発が不可欠である。骨組織および軟骨組織は、骨髄あるいは関節腔と接しており、免疫細胞と細胞間相互作用を有していると考えられ、骨生物学と免疫学の融合、いわゆる“骨免疫学”が提案された。本研究では、この概念をさらに発展させ、骨組織および軟骨組織の破壊過程に対する免疫細胞の直接的関与に着目し、骨免疫学の新機軸を創出し、骨・軟骨破壊性疾患に対する新たな創薬基盤の構築を目指して研究を遂行している。すでにマクロファージが産生する新規炎症性サイトカインを同定し、その遺伝子ノックアウトマウスを作製し、その機能的重要性も明らかにしている。今年度は、すでに明らかにしている新規サイトカインの受容体の複合体の全貌を示し、その受容体の機能を阻害剤にて抑止すると、関節破壊が抑制されることを見出した。また前年度に明らかにした、新規サイトカインの細胞内シグナル伝達経路を特異的阻害剤あるいは遺伝子工学的に遮断すると、そのシグナルが阻害され、関節破壊を引き起こす酵素群の遺伝子発現を抑制することを見いだした。さらにすでに明らかにしている、この細胞内シグナル伝達経路の下流で機能する転写因子の発現あるいは機能を抑止すると、関節破壊を引き起こす酵素群の遺伝子発現を阻害することを明らかにした。これら転写因子の機能を解析した結果、これら転写因子が関節破壊を引き起こす酵素群の遺伝子のプロモーター領域に直接結合することも、クロマチン免疫沈降法にて示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.同定した新規炎症性サイトカインの複合体に対して、有効に阻害効果を示す薬剤を見出した。 2.同定した新規炎症性サイトカインの細胞内情報伝達経路に対する特異的阻害剤が、有効的に作用することを明らかにした。 3.同定した新規炎症性サイトカインの細胞内情報伝達経路を担う遺伝子ノックアウトマウスを用いて、その機能的重要性を示した。 4.同定した新規炎症性サイトカインの作用を担う転写因子群の作用機序を明らかにした。 以上の研究結果を総合的に考慮し、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.同定した新規炎症性サイトカインの転写ターゲットである関節破壊酵素の遺伝子座にマーカー遺伝子をノックインした遺伝子改変マウスを作製する。ノックインマウスの作製には、Cas9ゲノム編集法を用いる。 2.1で作製したマウスから初代骨芽細胞、成長軟骨細胞、関節軟骨細胞を採取し、実用的なハイスループットスクリーニング系を構築する。 3.2で構築したハイスループットスクリーニング系を用いて、低分子化合物ライブラリーをスクリーニングし、ヒット化合物の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴って、就業禁止等の研究時間の縮小を余儀なくされたため、予定の研究活動が制限され、消耗品をはじめとする物品等の購入予定が少なくなった。さらに、国内および国外の研究打ち合わせ、研究成果発表あるいは研究情報の入手のための旅費を執行できなかった。しかし研究が当初見込みより格段にスムーズに進展したため、予定していた実験を非常に効率的に実施できた。またオンライン等の活用や研究活動の弾力的かつ柔軟な工夫により、研究に必要な情報収集を行えた。その結果、予定していた研究成果を上げることができた。2021年度は、支出を予定していた2020年度の差額費用を、研究成果の再現性の確認実験を重ね、その成果の検証に充当する。また、新型コロナウイルスの感染状況を慎重に検討しながら、研究成果の発信、発表にも当該研究費を活用する。 当初、2021年度に予定していた研究費用は、当初の研究計画に充当する。
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Research Products
(6 results)