2020 Fiscal Year Research-status Report
逆算アルゴリズム等価性による大規模衛星観測網の高精度化:新パラダイムの創成と実証
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20K20487
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
吉岡 博貴 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (40332944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市井 和仁 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (50345865)
松岡 真如 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (50399325)
小畑 建太 愛知県立大学, 情報科学部, 講師 (80758201)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 衛星コンステレーション / 逆算アルゴリズム / 等価性 / ひまわり8号 / GEO / MODIS / LEO |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度(1年目)の研究では,波長応答関数や観測幾何条件等の違いに起因するセンサおよび観測結果の固有性について検討し,そのセンサ固有性の抽出方法を考案するに至った.実施2年目となるR2年度は1年目の結果を踏まえ,個々に抽出されたセンサの固有性に関する情報を,センサ対ごとに結合することの可能性について検討を進めた.本研究では,センサの固有性に関する情報を逆算アルゴリズムの係数として抽出するが,そのアルゴリズムとして解析的に扱うことが可能な線形混合モデルを用いた植被率定量手法および反射率間関係式に基づく逆算アルゴリズムを採用している.バンド反射率の線形結合およびその比演算で定義される植生指数一般形を念頭に,センサ固有性結合の1例として,それら指数間の関係性を解析的に導出した.年度後半では,導出結果の妥当性を評価するために,実データを用いた数値実験を実施した.その実験では,逆算アルゴリズム等価性が成立すると予想される観測データ(範囲)を対象領域に設定し,導出した関係式に基づく植生指数の変換を解析的に試みた. それら数値実験の結果から,逆算アルゴリズムの等価性が成り立つと予想される領域内においては,植生指数を対象にしたセンサ間の変換精度が飛躍的に高まることを確認している.そのことから,(1)観測結果の直接的な比較(回帰など)を一切おこなうことなく,(2)逆算アルゴリズムの係数をセンサごとに独立に決定し(センサ固有性の分離:R1年度の目的),(3)その係数を有するセンサ対ごとに,それら係数を適切に結合することで(センサ固有性の結合:R2年度の目的),(4)植生指数の値をセンサ間で相互に変換するための手法の1例を示すことができた.これらの結果は,本年度の目的,すなわち,独立に決定したセンサ固有性の結合可能性を示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,挑戦的な課題を設定しているが,効率化を図るために3グループが連携する体制で取り組んでいる.研究グループ内および国外の研究者らと連携した本課題に関連する研究成果として主に次の3点が挙げられる:(1)逆算アルゴリズムの等価性に着目した植生指数の相互変換に関する研究,(2)角度依存性の1つとして太陽高度の変化によって生じる影の影響に関する研究,(3)植生からの影響を受けていない地表面における変換精度についての研究.R2年度は,それぞれの成果を原著論文にまとめ投稿した結果,いずれも採録まで進めることができている.そのことから,実施2年目としてはある程度の進捗があったと考えている. 一方では,感染症対策にともない大学運営および教育に関する業務が増加したことや,県外への移動が一年を通して困難であったことから,当初計画していた対面によるグループ間の意見交換は実施できていない.集中的におこなう深い議論の成果として期待できる思考の展開や,それら考え方を洗練してく過程,さらには,各グループで蓄積している知見の共有という面では不本意ながら本研究にも影響が及んでいる.それら知的作業の効率を期待どおりのレベルまで高めることができなかったことは反省点である.今後は,遠隔会議による議論の手段をこれまで以上に活用するなど,改善を試みたい.これらの理由から,実施2年目の進捗状況としては,やや遅れているとの判断が妥当であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では大規模な衛星観測網を想定し,センサ間の観測結果を相互に変換するための研究を展開している.そのために必要な理論を次の3項目に分類している:(1)センサ固有性の分離可能性,(2)センサ固有性の結合可能性,(3)逆算アルゴリズムの等価性.各項目に関連するサブテーマを設定し,3研究グループが並行して研究を進めている. 実施1年目(R1年度)では,センサの固有性を逆算アルゴリズムとして抽出するための方法について研究を進め,その結果,植生変数等の逆算アルゴリズムをセンサごとの特性に応じて抽出し,それらを調整するための手法について一定の知見を得た.実施2年目(R2年度)では,個々に抽出されたセンサの固有性に関する情報を,センサ対ごとに結合することの可能性について検討を進めた.2年目の実施によって,独立に決定したセンサ固有性の結合方法に関する一例を示し,その具体的手法についての成果を得ている. 今後の研究期間では,(R3年度)解像度依存性の影響に配慮しつつ変換手法の可能性を追求し,(R4年度)逆算アルゴリズムの等価性について検討を進める.その後は,(R5年度)アルゴリズムの実装および数値実験を実施し,(R6年度)研究全体の成果を理論体系としてまとめることを計画している.特に,3年目のR3年度では,逆算アルゴリズム等価性についての検討,太陽高度の影響に起因する問題点,静止衛星と低軌道衛星(極軌道衛星)を対象としたセンサ間比較のためのデータセット構築などに研究の軸足を移していく.
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Causes of Carryover |
R2年度は予定していた出張が実施できなかったため,研究費の一部を支出していない.次年度(R3年度)は,計画どおりの出張旅費,または,再度実施が困難な場合には,遠隔で議論を円滑に実施するのための機器購入等に使用することを計画している.
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Research Products
(5 results)