2022 Fiscal Year Research-status Report
逆算アルゴリズム等価性による大規模衛星観測網の高精度化:新パラダイムの創成と実証
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20K20487
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
吉岡 博貴 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (40332944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市井 和仁 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (50345865)
松岡 真如 三重大学, 工学研究科, 准教授 (50399325)
小畑 建太 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (80758201)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 衛星コンステレーション / 逆算アルゴリズム / 等価性 / ひまわり8号 / GEO / LEO / MODIS |
Outline of Annual Research Achievements |
R4年度の目標は,逆算アルゴリズムの等価性について検討を進め,複数の衛星間組み合わせへの対応を念頭に,変換アルゴリズムの拡充に着手することである.センサ固有性の分離とそれらの結合を対象とする本研究では,観測幾何条件の違いなどがセンサ間のデータ変換精度に深く関係する.実施4年目もこれら複数の検討項目を3つのグループで同時並行的に進めた. 本年度はまず波長応答関数の違い等,幾何条件以外を可能な限り分離して検討することを目指し,開発中の変換手法の妥当性について数値実験を実施した.その結果,直下視観測からのずれが少ない中解像度の場合,本手法によるデータ間の変換精度は十分期待できることが明らかとなった.次に,幾何条件の差が大きい場合を想定し,観測幅の比較的大きいセンサ間の変換手法開発に着手した.その例として,中緯度地帯における静止軌道衛星(GEO)と極軌道で運用される低軌道衛星(LEO)との間の観測データ間の相互変換を想定し,処理システムの構築に着手した. R4年度の取り組みによる主な成果は下記の2点にまとめられる.(1)前処理としてGEO衛星の観測データに対する標高の及ぼす影響を補正する必要があった.本研究ではGEO衛星の特性を考慮した補正アルゴリズム(オルソ補正アルゴリズム)を構築し,論文として公表した(受理のタイミングから次年度に報告予定).(2)LEO衛星の観測幾何条件は同一地点であっても観測日時に大きく依存するが,これまではこの情報をデータの取得後に把握していたため,データを取得する前に把握することができている.具体的には,LEO衛星の軌道シミュレーションを事前に実行し,日時毎の観測条件の特定を実現した.それにより,GEOとLEOの間における観測幾何条件の違い(条件の比較的良い日時)をデータ取得以前に特定できるところまで進捗している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,設定した挑戦的な課題に対して,3グループが連携し,並行的な実施体制で取り組んでいる. R4年度の取り組みによる主な成果は,比較対象データの高精度化,および,比較対象データの選別方法(スクリーニング手法)に関する下記の2点にまとめられる.(1)本研究ではGEO衛星の特性を考慮した補正アルゴリズム(オルソ補正アルゴリズム)を構築し,比較対象データの高精度化を進め論文としてまとめた.(2)次世代型静止衛星(GEO)と低軌道を利用する地球観測衛星(LEO)を比較する場合,それぞれの観測幾何条件をデータを取得する前に把握しスクリーニングすることが当該分野の研究に効果的である.今年度の研究により,LEO衛星の軌道シミュレーションを事前に実行し,日時毎の観測条件の特定が可能となった.GEOとLEOの間におけるデータの比較に適したデータの選別が,データを取得する前に特定できるところまで進捗している.それらのことから,実施4年目までは一定の進捗があったと判断している. 一方,約3年間におよんだ感染症の社会的影響は,運営業務の増加という形で3グループの研究者らにも及んでいた.特に,当初計画していた対面によるグループ間の意見交換が実施困難な時期が続いた影響が残っている. その影響も,主要メンバの移動によって改善した対面による意見交換のしやすさによって回復しつつある.議論を重ねることによって期待できる思考の展開や各グループで蓄積している知見の共有も進み,共著による原著論文の採録につながっている.しかしながら,R4年度においては知的作業の効率化を期待どおりのレベルまで高めることができたとは言えず,反省すべき点である.これらの理由から,4年間における進捗状況としては,やや遅れているとの判断が妥当と認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では大規模な衛星観測網を想定し,センサ間の観測結果を相互に変換するための研究を展開している.そのために必要な理論を次の3項目に分類している:(1)センサ固有性の分離可能性,(2)センサ固有性の結合可能性,(3)逆算アルゴリズムの等価性.各項目に関連するサブテーマを設定し,3研究グループが並行して研究を進めている. 実施1年目(R1年度)では,センサの固有性を逆算アルゴリズムとして抽出するための方法について研究を進め,植生変数等の逆算アルゴリズム(に用いられる変数)をセンサごとの特性に応じて抽出し,それらを調整するための手法について一定の知見を得た.実施2年目(R2年度)では,個々に抽出されたセンサの固有性に関する情報を,センサ対ごとに結合することの可能性について検討を進めた.実施3年目(R3年度)では,解像度依存性の影響を考慮すると同時に,変換手法の可能性を追求し,逆算アルゴリズムの等価性についての検討に着手した.実施4年目(R4年度)では,逆算アルゴリズム等価性の検討と同時に,複数の衛星ペアを想定した包括的な観測結果変換手法の開発に着手した. 今後の研究期間では,(R5年度)アルゴリズムの実装および数値実験を実施し,(R6年度)研究全体の成果を理論体系としてまとめることを計画している.特に,5年目のR5年度では,GEOとLEOの衛星間の変換を念頭に置いた変換アルゴリズムの検討を進め,計算機上での実装および数値実験を進めることを計画している.
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Causes of Carryover |
R4年度は予定していた成果の論文化作業(投稿準備)の進捗が遅れたため,一部の研究費を次年度に利用することにした.その1つである次世代型静止衛星の幾何精度向上に関する論文は,R5年2月に投稿を完了したが,実施報告書執筆のこの時期までに採択が決定したため,次年度使用が確定している.その他,作業実施のための研究補助業務などに支出する予定が一部次年度にずれ込んだため,予算の一部につてはそのための支出を計画している.
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